婚活編

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 一つ目は四十代前半の外資系企業勤務、二つ目は三十代後半のテレビ局勤務の女性だった。二人共仕事優先を容認してくれる男性という点で波那に興味を持ったらしいのだが、家庭的なタイプではなく同志の様なタイプを求めていた。乙メンの波那では女友達扱いで、結婚相手として見てもらえなかったのだった。  彼は憧れの『主夫』への道のりがこんなに厳しいものなのか、と婚活の難しさを妙に痛感させられている状態だ。  そんな中、波那の職場の上司でまさにそれを実行している男性社員が居る。彼は営業一課課長代理の小田原淳二(オダワラジュンジ)四十五歳、二十歳の娘を筆頭に、九歳、五歳、三歳の息子が居るために育児勤務状態を十年近く続けている。この会社では男性も育児に参加できるよう、女性の社会復帰がいち早くスムーズに行えるよう全社員に一子につき最大六年の育児休暇ないしは勤務制度が設けられており、彼は妻に代わってこの制度を最大限利用して積極的に育児に奮闘しているのだ。  小田原の妻は官僚勤務の才媛であり、夫よりもはるかに給料が良いので一家の大黒柱となって家計を支えている。よって彼は毎日午後三時に退社して、子供の幼稚園へのお迎え、日々の買い物、家に帰れば洗濯物を取り込んだり、夕食を作ったり。彼に言わせると家事の方が忙しいそうで、仕事ではほぼ窓際状態となっている。それでも本来は優秀な人材である事を裏付けるかの様に、社内では物凄い人脈を持っていて何かと人望は厚い人だ。
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