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「ところで波那ちゃん、婚活は順調?」
この日波那は小田原と屋上へ上がり、自作のお弁当を広げている。
「いえ、なかなかうまくいかなくて……」
「そんなに焦らなくて良いと思うよ。出逢う時にちゃんと出逢える様になってるから」
だと良いのですが……このところ撃沈続きの彼は少しばかり落ち込んでいた。しかし小田原は、まだ若いんだから。と笑っており、慰めるかのように背中をポンポンと叩いてきた。
「大丈夫大丈夫、今がっつくとかえって変なの捕まえちゃうよ」
「はい、そうですよね」
波那はようやく笑顔を見せ、二人はお弁当のおかずを交換しあって和やかなランチタイムを過ごしていた。
週末、波那は気分を変えて六歳年上の次姉陸奥里佳子の子供二人を公園に連れている。彼女の子供は四歳と生後八ヶ月の男の子で、上の子は近所のママ友の子供たちと仲良く遊んでおり、下の子はすやすやと眠っている。
「この時期の子供って日に日に大きくなっていくのよね」
乳児はどこへ行っても大人気で、彼女たちは代わる代わる赤ちゃんの顔を覗き込んでいる。
「えぇ、ハイハイし出すと一気に活発になっていきますから」
「そうそう、あの頃は大変だったけど、今となっては懐かしい」
彼女たちはすぐ傍で遊んでいる子供たちを懐古しながら微笑ましく見つめている。こういうの良いなぁ。彼は母親ならではの優しい顔と子供たちの元気な姿に癒されて、婚活の苦労をほんの少し忘れさせてくれていた。
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