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彼は四兄時生の同級生で、小さい頃から小さくて体の弱い波那を何かにつけいつも気に掛けていた。高校卒業後、大学進学を機に実家を離れていたのだが、一昨年勤めていた会社が倒産してしまい、実家に戻って自宅から通える地域を選んで、今は製薬会社の営業マンとして働いている。
「ありがとう総ちゃん、わざわざ連れてきてくれたんだね……」
「びっくりしたよ、通勤途中にへたり込んでるの見掛けたからさ」
津田は心配そうに顔を覗き込んでくる。顔色悪いな。彼は大きな手で波那の頬をそっと撫でてきた。
「今日は仕事休んだ方が良いね、最近何か新しい事でも始めたかな?」
おじいちゃん先生の問診で、婚活の事だろうと思った波那は、はい。と頷いた。
「慣れない事をして疲れちゃったんだと思うよ、少し休むかペースを落とそうか」
「分かりました、そうします」
波那は処方されている薬はまだ残っているので、今回は診察だけで病院を後にする。その際津田が、一人にするのは心配だ。と家まで送ってくれ、会社にはこの日一日休ませてもらう事にした。
最近沼口が加入したかと思えば、今度は広島支社で退職者が出たので営業一課から一人そこへ転勤する事が決まる。その男性社員の補填は中途採用を決めている若い男性を配属させて後任に据えると発表された。
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