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中林は正月休みを利用して、恋人である千郷を訪ねに信州へやって来ていた。しかし今回は新カップルの交際振りを見たがった毛利と津田も付いて来ており、なかなか賑やかな状態となっている。
「今更何なんですが、実家のあるあなたたちが何でここに居るんすか?」
「別に良いじゃない、クリスマスに戻ったばっかだもん」
「家は姉と妹二人家族が居るから今頃うるさいくらいだよ、俺だけ独身だから案外肩身狭いんだ」
二人して尤もらしい言い訳をしているところに、台所に立っていた千郷が熱燗を、理彦は年越しそばを持って居間に入ってきた。
「はい、年越しそば。ゆう君と津田さんと母さんはネギ無しね」
「へぇ、『ゆう君』って呼んでんだぁ」
毛利は中林の隣に座った千郷を見てニンマリする。
「はい。どこか変ですか?」
千郷は毛利の詮索にキョトンとしており、中林は渋い表情で下衆と軽く睨む。
「それくらいは良くないか? 津田っちみたいにあっちのカップル見て文句タラタラ言ってるよりは」
中林はまぁなと言って理彦と匠のカップルと話をしている先輩を見る。毛利から聞いているだけなのだが、下手に波那を幼少期から知っていて思うところも色々ある様で、浮気の末の交際なだけに未だ畠中が気に入らないらしいのだ。
ひょっとしたら俺と付き合ってた時もこんな気持ちだったのだろうか? 告白劇までやらかしたみたいだし、見た目とは違って案外嫉妬深いと言うか独占欲が強いと言うか……。
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