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「総さん意外と中身ガキなんすね?」
後輩の呟きに反応した津田は、何か言ったか? と振り返る。いえ。中林はしれっとした態度で首を振り、出来立ての年越しそばを少しずつ食べ始める。毛利は千郷から交際の状況を聞き出しており、隣に居る恋人はさして気にせず正直に答えていた。
「この男の質問に真面目に答える必要無ぇぞ」
「隠す様な事してないからね、そこまで気にしなくて良いんじゃない?」
千郷はそう言いながらそばをすする。毛利はミッション系の生活をしてきたせいか日本式の正月に馴染みが薄いのだが、ご当地ブランドとも言えるこのそばは気に入った様で美味しそうに食べている。
「来年から店でも年越しそば出してみようかな?」
「え? お店休みじゃなかったんですか?」
「うん、基本無休だよ。だからクリスマスも正月も休み取ったらマスターに文句言われちゃって。今頃一人で店立ってくだ巻いてんじゃないかな?」
そんな話をしていると年末恒例の歌番組が始まり、津田はテレビに気を取られ始める。と言うのは、この年司会を担当する女優の大ファンで、ここで観るにも関わらず自宅でも予約録画をする念の入れようだ。
「この女優さん、大河ドラマに主演なさった方ですよね? 僕も結構観てたんです」
千郷もテレビ画面に顔を向ける。
「千郷は子供の頃から大河ドラマとか時代劇の方が好きだからな」
「だって歴史の勉強になるじゃない、それに僕もこの女優さん割と好きなんですよ」
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