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千郷は津田の好みに同調し、酒を飲みながらテレビに夢中になる。他の面々もテレビに視線を向け、年末らしい一家団欒を楽しんでいた。
年が明けて二週間ほどが経った土曜日の午後、かねてより交際していた嵯峨丞尉と南愛梨との結婚式が開かれていた。二人はチャペルで永遠の愛を誓い合い、丞尉の幼馴染みとして参列している波那を含めた参列者からも惜しみない祝福を受けていた。
式も佳境を迎え、いよいよ独身女性にとってはメインイベントとも言える新婦のブーケキャッチで場の雰囲気はにわかに色めき立っている。麗未をはじめとした同級生や奈良橋ら職場関係の独身女性が参加し、十五名ほどが決められた枠内に収まってブーケを狙っていた。
そして愛梨が小高い台の上に立ち、ギャラリーに背を向けてブーケはふわりと宙を舞う。弧の字を描いて向かった先は……女性たちを飛び越えて、見守る側だったはずの波那の手の中にすぽっと収まった。会場内はちょっとしたハプニングに一瞬静かになったのだが、それでも畠中との交際を知っている者たちも居るせいか周囲からは拍手が沸き起こった。
「……これって良いのかな?」
波那は気恥ずかしそうに隣に居る畠中を見上げる。
「ありがたく貰っときな」
「うん」
波那は頬をピンクに染めてブーケを見つめていると、愛梨が嬉しそうに歩み寄って、おめでとう。と声を掛けてきた。
「次は波那ちゃんだね、これ受け取った方が年内に結婚出来るよう祈願してもらってあるの」
「ありがとう」
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