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「ってかお前ヨメに行く気か?」
新郎である丞尉もやって来て友人のゲイカップルを見て笑う。
「その表現は正しいのかな? 両方が男なだけに」
二人は悩ましい表情でお互いの顔を見合わせている。
「ったく、人の結婚式でラブラブしてんじゃないよ」
「良いじゃないの、ブーケを受け取れて嬉しかったのよ」
丞尉の呆れ顔を愛梨がたしなめていると、丞尉が職場の同僚らしき男性に呼ばれ、新婚夫妻は大きな男性集団の中に入っていった。しばらくするとそこで新郎の胴上げが始まり、他のギャラリーたちがそちらに移動していく。二人はその場に留まり、遠巻きに胴上げを見つめていた。
畠中は傍らに立っている波那の左手を取り、空いている手でポケットを漁る。丞尉の胴上げに気を向けさせる様話し掛けながら用意していた指輪を波那の左手薬指にそっとはめた。
「え?」
左手薬指の感触に気付いた波那は恋人の顔を見る。畠中はにこやかな表情を見せて、波那。と呼び掛けた。
「近い将来、一緒に暮らさないか?自分の家庭ってやつを作ってみたいんだ」
「……本当に僕で良いの?」
「当たり前だろ、お前以外の奴にこんな事言う気ねぇよ」
畠中は恋人の細い顎にそっと手を当てる。波那は笑顔を見せつつも泣きそうな表情も見せて何とも言い難い顔になっていた。
「ありがとう。凄く嬉しい……」
波那は畠中に体を寄せ、皆が胴上げに気が行っているのを良い事に短いキスをする。そしてコクンと頷き笑顔を見せた。
「良かった」
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