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畠中は滅多に見せない満面の笑みで恋人の小さな体を思いきり抱き締める。二人は人様の結婚式を拝借して永遠の愛を約束し、いつまでも離れようとしなかった。
それから時は流れ、二人が交際を始めてから間もなく一年が経とうとしていた。交際までの紆余曲折が嘘みたいに順調に愛を育み、双方の家族にも祝福されて幸せ一杯の日々を過ごしていた。
そして年の瀬間近のこの日、遂に約束を実現すべく波那と畠中は同姓を名乗れる様戸籍を変え、居住地は畠中の自宅に移す事にして朝から引っ越し作業に追われていた。彼の弟泰地と伽月の手伝いもあって作業は良いペースで進み、引っ越し業社で働いている泰地のお陰で部屋の家具の配置はほぼ終わっている。
「僕もう疲れたよぉ~」
大柄とは言ってもまだ小学生の伽月はリビングのソファに座り込む。波那は用意していたお弁当を出して皆に休憩を促した。
「少し休まない? お弁当作ったんだ」
波那が星哉と泰地を呼びに行き、その間伽月が食事の支度をしてくれていた。四人はお弁当を囲んで座り、畠中の合図で食事を摂り始める。特に伽月は波那の料理が大好きで、パクパクと勢いよく食べて一気に元気になっていく。
「ねぇ波那ちゃん、デザートあるの?」
「うん、あんこが残ってたからどら焼作ったんだ」
「ホント?」
伽月の瞳がパッと輝き、波那はクーラーボックスから紙の包みを取り出した。手作りのどら焼は少しずつ大きさも焼き色も違っていて、自家製らしくラップで個包してある。
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