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彼は小田原が止めるのも聞かず、それを自身の方に引き寄せる。すると何故か波那と奈良橋を呼んで中身を嬉しそうに見せている。
「何だ? あれ」
畠中にはその光景があまりにも不自然に映り思わず声に出してしまう。社長だよ……! 隣のデスクで仕事をしていた男性社員が慌てた風に答えた。
「多分接待用でデザート作ってもらったんだ。あの人調理師の免許持ってて、腕前はプロ級だから」
はぁ? そんなの聞いた事無いぞと変な顔をする。
「買った方が早くないすか?」
「何言ってんの? ウチ今でこそコーヒーが主力だけど食品メーカーなんだよ。資格の有無に限らず料理上手が多いし、何気に菓子部門に力入れてるんだ」
彼からすると畠中の発言の方が不思議な様である。
「カフェがあるくらいですからそうでしょうけど、そっちの部門に任せた方が良くないですか?」
「勿論そういう時もあるよ。でもカフェだと二重の負担になるし、別の課からの新しい発想を引き出す狙いもあるんだ、それが新商品に繋がる事もあるし。今日みたいなパターンは有資格者限定なんだけどね」
「って事は……」
「うん、あの二人栄養士の資格持ってるよ」
男性は普通に答えて仕事に戻る。言いたい事は山ほどあった畠中だが、ここは仕方なく仕事に戻った。
【小泉波那様
近日開催を予定しておりますお料理婚活、アナタも是非参加してみませんか?】
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