婚活編

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 「そうかなぁ? 仕事を優先させたい女性っていっぱい居るんじゃないの?」 「蓋開ければそうでも無いんじゃないの? どこか腹の片隅には男に養ってほしい、ってが本音だと思う」 「麗未ちゃんもそう思ってる?」 「私は嫌よ、一日家に居るのは性に合わないもん」  だよねぇ。波那と違ってアクティブに動き回る性分の姉を見て思わず笑ってしまい、翌日職場に持って行く用に作った焼き菓子の残りをちまちまと食べていた。  翌日、波那はその焼き菓子を持参して少し早めに出勤する。この日札幌支社から異動してくる男性社員がいるので、その彼には『今日からよろしくお願い致します』とメッセージカードを添えて全員分のデスクに置いておいた。  この男性社員は前日ギリギリまで札幌勤務をこなしていた事もあり、朝の便でこちらに向かって昼からの出勤となった。彼の名前は沼口昇(ヌマグチノボル)、札幌では営業成績トップを誇る花形社員で、現在三十二歳の独身男性である。その功績が評価されての本社勤務となり、若手の中では最も出世街道に乗っていると言っていいほどのエリートである。  彼は三時の小休憩の時に、デスクに置いてあった波那の作った焼き菓子を食べてみる。これは美味い。どこかの洋菓子店の物だろうとと思いラッピングを確認してみたが、品質表示シールはどこにも貼られていない。一体誰が持ってきたのか? と隣のデスクに居る男性社員に声を掛けた。 「『波那ちゃん』の手作りですよ、きっと。今日は外回りで居ませんけど」
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