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波那の申し出に麗未は上機嫌になり、あんたは良い子だねぇ。と頭を撫でる。彼女は唯一下のきょうだいとなる波那にだけには甘く、虚弱体質の事を誰よりも気に掛けている。
「うん、つまみはこんだけあれば足りるよ、多分」
「ちょっと待てよ麗未、一人で食べる計算してるだろ?」
「え?違うの?」
だと思ったよ……。丞尉は麗未にとっても同級生なので、ある程度お互いの事は熟知している。
「後でおばさんとも一緒に食べようと思って作り置きしてあるよ、足りなかったら勝手に食ってて」
へ~い。麗未はすっかり飲食モードでくつろいでおり、買い出しに立ち上がった二人を見送る。すると母小泉早苗がパートタイムから帰宅してきて、いつになく大荷物で中に入ってきた。その中にはのしの付いた缶ビール一ケースもあり、波那は、どうしたの?それ。と訊ねる。
「商店街のガラポンで当てちゃって、二等賞」
早苗は重そうに荷物を下ろしており、ちょうど出掛けようと玄関にいた波那と丞尉も手伝っている。
「何当てたの?」
麗未も反応して覗きに来ると、缶ビール一ケースに満面の笑みを見せて早速中身を冷蔵庫に入れている。
「そんな時だけ早いんだから……。まさか波那と丞尉君に買い物させようとしてたんじゃないでしょうね?」
母には完全に見透かされていたのだが、麗未は平然と、そんな事しないよ。と首を振った。
「とき兄にお願いしたら波那が気を利かせてくれたの」
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