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婚活編
「そろそろ婚活かなぁ」
自宅最寄り駅で貰ったばかりのチラシを片手に、一人の男性が結婚相談所の前に立っている。
彼の名前は小泉波那、昨日三十歳を迎えた独身男性である。彼には理想の結婚像があり、仕事の優先を望むキャリアウーマンの『主夫』になる事であった。勿論専業主夫にこだわっている訳ではないのだが、彼自身が虚弱体質で仕事人としての出世が望めず、家事全般が得意なのもあって、その路線で相手を探す方が向いている。と本人は思っている。実際彼の履歴にもそれが表れており、栄養士と保育師の資格を取得している。
波那は意を決して中に入ると、四十代後半位の女性がいらっしゃいませ。と声を掛けてきた。彼女はとても手際良く彼を案内し、スピーディーかつ丁寧にここでの婚活システムを説明してくれる。早速会員登録をするために簡単な履歴を記入する事になったのだが、れっきとした男性にしか見えないのに、高校は家政科、保育系の短大卒、という女の子の様な履歴に、女性相談員は波那の顔をまじまじと見つめている。
「あの、条件の記入はこちらではございませんが」
そのくせ勤務先は大手食品メーカーの営業事務、とあって何だか腰掛けOLの様な履歴に見えているらしい。
「ハイ、僕の履歴ですよ」
不思議そうな顔をしている彼女に、波那はあっけらかんと答える。
「そうですか。ところで、お相手の方の具体的な御条件はございますか?」
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