皇居での生活が始まる

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「えっと……そのすまない。嬉しくて思わずハグをしてしまった。今後も愛憐と呼ぼう。さて、そろそろ戻りましょう」  パっと身体を離して珠羅は、愛憐と並んで後宮に向かって歩き始めた。  ほんのり珠羅の頬が赤く染まっているように見えるのは、愛憐の気のせいだろうか。  後宮に戻ると、二匹が仰向けになってへばっている姿が視界に入った。 「仁!」 「仁様?! 琉佑(るう)、あれほど加減して差し上げろと言ったのに、こんなになるまで稽古をつけたのか?」  愛憐より先に仁の傍に駆け寄った珠羅は、仁の隣で仰向けになっている少し大きな猫に声をかけた。 「珠羅様……! 早く一人前になりたいから容赦するなと仰ったので、つい手加減するのを忘れてしまいました」 「我が……、琉佑さんに……そうお願い、したニャン……愛憐さん……おかえりなさいニャン……」 「立ち上がらなくていいよ。仁、頑張りました」  愛憐はやや遅れて仁の傍に駆け寄り、そっと抱きしめた。 「珠羅様、仁は大丈夫です。私を守ると言った以上は、これしきの事でへばってられないくらい強くなってもらいます。琉佑さん、これからも鍛えてくれませんか?」  愛憐は、仁の頭を右手でモフモフしつつ、左手で琉佑の頭をモフモフしながら聞いてみる。 「もちろんです。ああ、モフモフが気持ちいいのです……。珠羅様、仁の育成は我に任せてくれませんか?」  愛憐にモフモフされながら、琉佑はお願いをしている。  ほのぼのとした雰囲気に、すっかり珠羅も琉佑を叱る事はせずに、任せると伝えてから、この後水浴びをする事を提案した。  愛憐は、気が済んだのかもふるのをやめて珠羅のほうを見ている。 「愛憐、どうかしましたか?」 「珠羅様は、面倒見がよいなと思ったのです。仁も一緒に水浴びさせていいですか?」 「大浴場があるので、人間と動物が一緒に水浴びできるのですよ。もちろん、仁様もどうです?」 「猫は基本的、身体が濡れのは嫌ニャン。琉佑さんは猫なのに水浴びは平気ニャン?」 「慣れです。仁も身体が綺麗になれば、もっとモフモフされますよ? 自分で毛繕いするだけでも綺麗になるけど、疲れもとれるのでオススメします。というか、敬語を使って話してください。年上に失礼でしょ」  琉佑は、思い出したかのように仁にたいしてそう言った。 「うっかりしたニャン……。今度から気をつけますニャン……。それよりお腹空いたニャン!」  テトテトと珠羅のほうに向かって歩いたと思えば、スリスリして甘える。 「おお、そうであった。お昼時なのだから、お腹が空いて当然。中に入って昼食としよう。琉佑も一緒にどうだ?」 「ありがとうございます。ご一緒させていただきます」  大広間に到着した一行は、簡単なお昼にした。  仁と琉佑は、身をほぐした魚が乗った皿を出されてがっついている。  一方、愛憐と珠羅は向かってパンやらスープを食しながら、会話を楽しんでいるといったところか。  
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