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婚礼の儀
ここに来て、早二週間が経とうとしている。
愛憐は、たまに珠羅のお供をする事があり、仁は置いていかれるのだが、指導者であり同じ猫仲間の琉宇と一緒に散歩に行くと、必ずもふもふされる。
「可愛い! 癒される!」
あっという間に人だかりが出来る。
「琉宇さん、助けてニャン」
揉みくちゃにされる仁を、恨めしそうに見ているのは琉宇だ。
「小さいってだけでいいよな。よし、みっちり稽古してやるから楽しみにしてな」
「え? 嫌ニャン。でも、この攻撃は耐えがたいニャン!」
仁は思わず、しつこくもふって来るので、猫パンチをしてしまった。
だが、子猫というだけで怒られる事はない。
「そろそろ戻るか」
散歩も飽きてきたのか、琉宇がそう言うと仁も、もふ攻撃から逃れるべくその場から去る。
後宮の沙利殿に戻ると、珠羅と愛憐の姿があった。
「仁様と何をしていた?」
「いろいろ道案内も兼ねて散歩をしてました。これから修業の時間です」
「珠羅さん、助けてニャン!」
仁は、あの特訓が好きではない。
「助けてあげたいが、猫世界のルールを知らないので、人間にはどうする事が出来ぬ」
愛憐から、仁にもあまり甘やかして欲しくないとお願いされているので、珠羅としては大変心苦しいのだ。
(許せ……、心を鬼にしているのだ。本当は、すぐにでも肉球ぷにぷにしたり、もふってみたいのだ……)
珠羅は、愛憐がいるので顔に出さないよう必死になる。
「見習いのままでは、いざという時に役に立たないから、さぁ、特訓だぞ!」
「仁、後からご褒美あげるから頑張ってね」
「なんと! 我に褒美をくれると言うのですニャン? 頑張りますニャン!」
キリリとするところは可愛い。
「では、失礼します。仁、本気でかかってきなさい」
二人(というか二匹)は、沙利殿から出て行くと稽古場に向かった。
褒美をくれると聞いて仁は、先ほどとは違って俄然やる気が出たらしい。
「仁様のやる気を出させるとは、愛憐はさすがというか……。私は少し仕事があるので、愛憐は部屋に戻って一休みしたらどうだ?」
「気遣いありがとうございます。仁の特訓の様子でも見てみます。後ほど、お食事の時にあの広間で会いましょう」
中腰で会釈をしてから愛憐は、沙利殿から出て行き玖荼呂殿に向かった。
珠羅と共に視察をしてきて、愛憐は少し疲れていたので、この気遣いは本当に有りがたいと思った。
部屋に戻ると、可憐が待機していて衣装などを替えるというのだ。
「私はこのままでもいいのに、一体、何があると言うのですか?」
「鳩千菴殿に行かれると、理由がわかるかと思います。ただ、珠羅様から愛憐様の衣装替えを頼まれたので、詳しい理由はわかっておりません」
そう言うと、早速、着替えの手伝いをすると言いだし、持ってきた衣装を愛憐に渡した。
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