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愛憐は、渡された衣装に着替えた。
可憐に自分で出来ない紐結びなどをしてもらい、ヘアスタイルも変えてもらった。
「少々、頭が重たいのだけど、何グラムあるのでしょう?」
「飾りを合わせたら5キロはあろうかと思います。愛憐様、お似合いですよ。支度が整ったので参りましょう」
「はい。あの……仁がまだ戻って来ていないのですが……」
部屋から出て数歩進んだところで、仁がまだ戻っていない事を伝えると、仁も間もなく、鳩千菴殿にお見えになるはずですので心配はいりませんと先頭を歩く可憐に教えられた。
「珠羅様、愛憐様がお見えになりました」
「どうぞ中へ。可憐も同席せよ。仁様がお見えになってから始めよう」
「「失礼します」」
二人の声が重なり、瞳が合ったので愛憐は可憐に微笑んだ。
可憐も、愛憐へ微笑み返してきた。
「愛憐は、我の隣へ。可憐は、斜め向かいの席についてくれ。琉宇たちもそろそろ来る頃だ。リラックスせよ」
「はい……。ここには様々なお部屋があって迷いそうですね」
愛憐は、俯いたまま独り言のように話す。
「まだ慣れぬうちは、広くて迷いそうになるが、いずれ慣れるから安心いたせ」
珠羅の言葉に愛憐は小さく頷いた。
どれだけの時間が経ったのだろう。
「珠羅様、遅くなり申し訳ありませんでした。ただいま戻りました」
「遅くなってごめんなさいニャン」
二匹が来たところで、また一人部屋に入ってきた。
ケモノ耳の男が入ってきた事に、愛憐は少し__いや、かなり驚いたが、声に出さず自分の太ももをつねる。
「珠羅様、全員揃いましたので、そろそろ婚約の儀式を始めても宜しいでしょうか?」
「では、始めてくれ」
珠羅が言うとその男は、片膝をついて、「準備致しますのでお待ち下さい」と述べると部屋の模様替えを始める。
日本ならありえない光景だ。
というか、この後宮には貴方以外、ほとんど人以外なんですけど、そんなにもふが好きなのですか? という質問をしてみたいが、ここはあえて我慢をする愛憐。
「それでは、これより婚約の儀式を執り行いたいと思います。珠羅様はこちらに、愛憐様はこちらに__」
言われるがままに、二人は指示された位置についた。
このスタイルは、異世界でも共通なのだろうか。
日本でも教会等で式を挙げる時は、新郎新婦が隣り合って並び、進行に従っている。
(婚約の儀式と言ったけど、本当に私は珠羅様のお嫁さんになるの?)
そう思った瞬間、愛憐は緊張してきた。
心拍数があがり、頬が紅潮しているのかもしれない。
「珠羅様、誓いの言葉を述べられて下さい」
ケモノ耳男の進行で、珠羅が牧師(こちらは人間)の前で愛憐が子供の頃、いとこの新郎が手紙を読んでいた光景と重なった。
愛憐の番となったが、事前に聞かされていなかったので当たり障りのない言葉を述べるが、ほとんど、誰かのパクリに過ぎない。
「愛憐さん、おめでとうニャン!」
仁がパチパチと拍手するので、周りもそれに倣い珠羅様、愛憐様とお幸せに! という言葉が飛び交いこの儀式は無事終了した。
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