小旅行

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 婚礼の儀式が終わり、ゆっくりする暇もなく、羅宇の外の世界へ珠羅と仁、それから、仁の指導猫の琉宇と共に用意された籠にそれぞれ乗って、目的地へ向かう事になった。  羅宇に新しく新王が誕生した知らせをする意味も含めた、愛憐が住んでいた世界でいうところのハネムーンである。  愛憐の隣には珠羅がいる。  もう一つの籠に仁と琉宇、それから数日分の衣装等が入っているのだ。  これが、愛憐のいた世界との違いだろうか。  アナログというのはこのことを言うのだと、愛憐は心の中で思った。 「猫たちの為に、休憩を挟みながら移動となる。愛馬は体格が良いので馬力があって、いざという時の蹴りを繰り出した時は相手はあっという間に吹っ飛ぶ。もちろん、我も一通りは剣術は習っているので、貴女を護る自信はある。あとは、あの二匹がいるから大丈夫だろうが、何もなく過ごしていける事を願う」  珠羅は、そっと愛憐の手の甲に自身の手を重ねてきた。 「そうですね。珠羅様が戦わなくて済む事を願ってます。仁もだいぶ強くなってきたみたいで、琉宇くんには感謝してます」  愛憐が微笑むと、珠羅は満足げに笑みを向けている。  しばらく進むと、珠羅たちを乗せた馬が立ち止まった。 「スーラが、何かを感じたそうです」  珠羅が聞くより先に馬使いが、少し先の様子を伝えてきた。 「大丈夫なのか?」 「どうしたニャン?」 「仁こそ、どうしたの?」  後ろからついて来ている仁が、いつの間にか二人の間に来てキョトンとしている。 「先頭を歩いていた馬が、突然止まったからすぐに駆けつけてきたニャン。馬と話してみるから待っていてニャン」  そう言うと仁は、素早く移動して先頭を歩いていた馬に近づいた。  愛憐が、猫神様の子供って、なんでも器用にできるものなの? なんて思っていたら、仁がもう愛憐の傍に来ている。 「なんとなく嫌な予感がするって言ってたニャン。でも、急いだら目的地に無事到着するとも言っていたニャン。だから、あともう少ししたら動き出すと思うから安心して大丈夫ニャン」 「仁様、ほぼ休憩無しで進めと仰るのですか? お腹もすくだろうし疲れ果てますよ?」 「寝てここまで来たから、体力温存しているので、我々は大丈夫ニャン。珠羅様も、安心してニャン。では、またあとでニャン」  身軽な子猫姿に戻ると、仁は足音をほとんど立てずに後ろの籠へ戻っていった。  仁の言う通り、馬は動き出したが少々スピードが速い気がする。  動物同士通じ合うのか、猫と馬でも話を少ししただけで、仁に感じたすべてを伝えたのだろう。
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