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「ずいぶんと飛ばしているな……。仁様が仰るような出来事が起きるのだろうか……」
「そうならないよう願いましょう。ところで、馬車はどこへ向かっているのですか?」
愛憐は、ずっと気になっている事を聞いてみる。
「子霧という国だ。羅宇の隣国だが、あまり交流がないのでこれを期に交流をして情報交換等ができるようになればと思っている。このスピードだとあと数時間で着くかもしれないが、どこかで休憩を取ろう。走りっぱなしも馬も疲れるが、我々もこの籠に揺られっぱなしも、身体が固まりそうだ。李、どこか適当な場所に止めてくれ」
珠羅は、馬を走らせている男に声をかけた。
「畏まりました。もう少ししたら休みましょう」
男は、そう言うとスーラに声をかけている。
小川のせせらぎや、小鳥のさえずる鳴き声が聞こえてきて、羅宇からだいぶ離れた事がわかった。
馬車がゆっくり止まったので、珠羅が李に仁たちに休憩を取る事を伝えてもらう。
「ここで一休みしよう。スーラ、ご苦労様。仁様、琉宇、お腹空いてないか?」
「お腹空いてるニャン。琉宇も食べるよニャン? あ、お馬さん、どうしたニャン?」
仁は、子猫姿から剣士姿になるとスーラに近づいて何やら話をしている。
「珠羅さん、大変ニャン! 賊が来るってスーラが言ってますニャン! 琉宇、我々は戦うニャン!」
「仁様、どちらから来るかわかりますか?」
「……もう来ているかもしれないニャン。その前に腹ごしらえニャン。愛憐さん、ご飯欲しいニャン」
こんな時でも仁は、お腹を満たす事を優先するらしい。
「馬鹿! 腹ごしらえしては、腹がいっぱいになって機敏に動けなくなるぞ!」
「少し食べるだけニャン! ケチ!」
「二人とも、争ってる場合じゃないでしょ! 仁、少しだけだからね! 待っていて」
愛憐は、もう一頭の馬の方へ餌を取りに行った。
その直後、愛憐の悲鳴と共に、愛憐を捕らえたガタイのいい男が珠羅たちの前に現れた。
「貴様、その方を離せ! 琉宇、頼んだぞ!」
「はい、任せてください。こら、そこの馬鹿猫! 飯は後だって! 大切な珠羅様の奥方になられた愛憐様を守るのだろう?」
「ひっひき(一匹)くらい……もぐもぐ……我は姫を守るニャン! 馬鹿猫ではないニャン!」
ケフッと小さくガス抜きをしてから仁は、腰にさしてあった剣を取り出して巨大な男に向かって走り出した。
珠羅は、ガタイのいい男に向かって聞いてみる。
「何故、その方を狙った? 何が望みだ?」
「宝石でもありそうだと睨んだが、二台ともそのようなモノはないのがわかったが、代わりにこの女を貰うぜ! 珠羅とやら、兄貴の蛇羅を恨むがいい!」
そう言うと愛憐を肩に担ぐと刀の刃を珠羅に向ける。
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