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「今回は許してやる。それにしても、猫二匹を連れて旅をするなんてあんた、変わっているな。俺より強い奴が現れたらどうするつもりなんだか」
「馬使いもいざという時は、即戦力として戦ってくれる。愛憐が我の元へ帰って来たという事は、もう用が済んだという事だな?」
愛憐をひとまず籠へ下ろすと、大丈夫だと笑顔を向けた。
「それなら安心しました。くれぐれも無理なさらないでください」
「ああ、わかっている。仁も、引き上げようか」
未だ、威嚇している仁に珠羅は声をかけた。
「我に提案があるニャン。こいつも同行させるってのはどうかニャン? 狼男もいれば心強いと思うニャン。我は、いつまでもあの事は根に持ったりしないから、安心していいニャン。名前わかんないけど」
威嚇する事も飽きたのか、仁は修羅に向かってついさきほどまで憎しみ合っていた男をお供にしたいと言い出した。
「元飼い主だった俺の名前を忘れたのかよ。まぁ、仕方ないよな。飼育放棄したのは俺だし。名前は浪だ。姫様を怖い思いさせたのに、同行させてもらえるとは思えないが……」
罰悪そうに地面を蹴りながら狼男の浪は言った。
「仲間は多いにこしたことはない。これから、長い付き合いになるだろう。よろしく頼んだぞ」
「こちらこそ。これからは、仕える者としてよろしくお願いします、陛下」
浪は肩膝をついて珠羅に挨拶をした。
こうしてモフがまた一人、仲間に加わった。
仁たちが猫姿になったので、浪は仁たちと一緒の馬車に乗り込んだ。
どれだけ走ったのか、やがて二台の馬車は目的地にたどり着いたようだ。
「珠羅様、愛憐様、お待ちしておりました。お供の方々もご一緒だと伺っておりますが、後ろの馬車がそうでしょうか?」
「予定より少し遅くなってすみません。我々の後ろの馬車に乗っている者たちがそうです。子霧の陛下に挨拶がしたいのだが、時間は大丈夫ですか?」
珠羅が聞くと、迎えに来た者が確認を取りたいので暫し待って欲しいと頭を下げてから馬車から降りるよう促し、皇居へと案内をしてくれた。
「羅宇の後宮よりこじんまりした造りのようですが、庭があってまるで日本の庭園を見ているかのようです」
愛憐は、通された部屋から窓の外を眺めての感想を述べた。
「日本を知らぬが、こういう所もあるのだな。可能なら、我も一度は訪ねてみたい」
ほのぼのとした空間をぶちやぶるかのように、浪が二人の夢物語についていけないような雰囲気を出して、あくびを一つしてからこんな事を言ってきた。
「かの有名な庭園のようだと仰ったけど、ジブリの世界を見ているようだぜ」
「ジブリとは?」
「壮大なる夢物語の舞台の話さ。な、お姫様よ、ここは夢の世界だと思わないか?」
「夢の世界……ですか? 私には、ここの世界も現実だと思ってますよ。夢の世界と言うのなら、ディズニーランドのような雰囲気を言うのでしょ?」
暫し、日本にいた二人の会話が続いた。
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