小旅行

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 あれからどれだけの時間が経ったのだろう。  仁など猫たちは丸くなって床の上に眠ってしまった。 「仁たちを寝かせてきます」 「ああ、頼む。面倒見がいいな、愛憐は」 「そのような事ないですよ。床の上だと痛いだろうと思って……風邪引いても困るし」  愛憐は、ほろ酔い気分でも、意識はしっかりしており、眠ってしまった猫たちを起こさないよう気をつけながら、そっとカゴに入て泊まる部屋に連れて行く。  寝室は、天蓋付きベッドと鏡台が置いてある。  羅宇より小さな部屋だが、愛憐と猫たちにはちょうどいい広さだ。  そっと猫たちをベッドへ寝かせたところに、珠羅が中へ入って来た。 「我々もお開きにしたところだ。愛憐、少し話をしないか?」  愛憐の手を取り、珠羅は寝室から別の部屋へと連れ出した。  そこには、子霧の陛下と浪もいた。 「俺たちの世界について聞きたいんだってさ。俺は、烏龍茶にしますけど、二人の陛下はどうします?」  空いたグラスを片手に椅子から立ち上がった浪は、二人の陛下の顔を交互に見ている。 「酔い冷ましに烏龍茶をいただこう。珠羅殿は、いかがいたします?」 「私にも、華陀留殿と同じモノを」 「畏まりました……って、先ほどの付き人はどうしたよ?」  ふと、客なのになんで俺がこんな事しているんだ? そう思って浪は、ちらりと部屋の外を見てみるが、誰もいないらしいので、セルフなら仕方ないかと思い直して、自分が人数分注ぐ事にした。  愛憐はというと、バルコニーに出て夜風に当たっていた。 「お持ちしました。珠羅様、愛憐さんをほったらかしにして大丈夫ですか?」 「景色を眺めているのだろう。私は妻を信じているのだ。だが、何かをしようとするならば、浪の命はないぞ」  クスリと笑う珠羅の目は笑っていない。 「わお、怖っ。大丈夫です。小娘には興味無いんで。さて、俺はそろそろ部屋に行きますね」  烏龍茶が半分残っているグラスを持って部屋から出て行き、寝室へ向かっていった。 「愛憐殿、貴女のいた世界と、我々のいる世界は違いはあるのでしょうか?」 「違い……、そうですね……何から話しましょう? 電話機というモノがこの世界には存在していませんね。人を呼ぶ時は鈴を鳴らしたり、手を叩いている事に驚きました。あとは、馬車が一般的には使われなくなり、観光地で観光客を乗せる乗り物として、季節限定で使われる地方があるくらいですね。人間、動物といった分け方をしてます。様々な種族がいるのはこちらの世界くらいかと思います」  愛憐は思い出す限りの事を話して聞かせた。  珠羅も華陀留もたいそう驚いた顔をして、愛憐の話を聞き入っているようだ。 「実に興味深いですが、時間がいくらあっても足りませんね。お疲れのところ、これ以上長く引き止めては身体に障るので、あすも続きを聞かせてください」 「はい、わかりました。あすも、時間が許す限りお話しますね。では、おやすみなさい」  夜の締めくくりの挨拶をすると、華陀留は不思議そうな顔をしたので、これは私がいた世界の夜の挨拶だと教えると納得してくれたようだ。  珠羅と一緒に部屋から出て、寝室へ向かった。  
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