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日本とは違う
愛憐は、黒猫の子猫を抱っこしながら猫神様に教えてもらった場所に向かっていた。
「愛憐さん、ギルドへ行くニャン。そこで、まずは仕事をもらうニャン」
「寄り道するの?」
愛憐が聞くと違うと言って、ていていと愛憐の腕をつつく。
「通り道にあるから先に寄るんだニャン。その方が行きやすいのニャン」
猫神様の子供という事も合って、語尾ニャンは仕方ないとしても慣れるまで聞きにくい。
「そこを右に曲がるとギルドがあるからニャン。ニャフ~」
機嫌がいいのか鼻歌交じりで、黒猫の子猫は言った。
「ところで、名前はあるの?」
「教えてなかったかニャン? 仁ていうニャン。剣使い希望するニャン」
にゃーにゃーうるさいけど、基本的猫好きなので、背中を撫でながら仁が言うギルドに向かった。
異世界という言葉がピッタリな世界に来てしまったけど、この子猫がいるのは今の愛憐には心強いはず。
「愛憐さん、ここですニャン」
ひょいと愛憐の腕から飛び降りた仁は、受付へと二足歩行していく。
「すみません、猫には仕事は与えていないのですが……」
「我は、こういう者ですニャン」
仁は、何かを受付で見せながら話をしている。
「これはこれは……、失礼いたしました。寛様の御子息でいらっしゃいますか。望まれる職業は何にいたしましょう?」
「剣士だニャン。姫様を守るのニャン」
シャキーンと剣を振るジェスチャーを交えるが、その姿は可愛らしい。
「畏まりました。そして、そちらのお嬢さんはどのような職業を考えてますか?」
受付嬢は、身を乗り出して愛憐の方を見る。
「わたしは、特に考えてません。ただ、このニャンコの世話が出来たらな……と思ってます」
「寛様のご子息でおられる仁様の付き人という事ですね。普段は猫姿の仁様の世話係という事ならば、必要な物を持っていかれるといいですよ。お待ちください」
受付嬢は、奥の方に姿を消してから数分後に、また受付に戻ってきた。
「何から何まで用意してくれてありがとうございます。こんなにたくさん……」
愛憐が戸惑っていると、受付嬢は他の職業の人がいない事を確認してから、一つ一つ丁寧に教えてくれた。
「また、何か必要な物が出たら立ち寄ってくださいね。仁様は、こちらで適性検査受けてもらいます」
「剣士になれるかニャン? 愛憐さんを待たせるわけにいかないので、ビシッと決めてきますニャン」
仁は、受付嬢のあとに続いてどこかへ行ってしまったので、愛憐は空いている椅子に腰を下ろして待つ事にした。
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