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旅先で喧嘩?
どうにか機嫌をとろうと試みるのだが、愛憐はプイとしてしまう。
愛憐が仁を手招きしてこう言った。
「お散歩に行きますって珠羅様に伝えて」
「にゃああああ! 我を伝言代わりに使うにゃああああ! 仲直りしたらいいのにできないかニャン?」
さすがは猫、間に入る事に嫌気をさしたようで、猫パンチはしなかったものの小さな牙を向けた。
威嚇とも違うが、嫌気をさしたという態度を取ってみせたのだ。
「陛下、ここはそっとしておいたらよろしいかと思いますよ」
浪は、愛憐がネコ耳をした種族という事から、気が向かないと何をしても無駄だという事だという事を察した。
「珠羅さん、我と一緒に散歩しようニャン」
仁は、ちらっと愛憐を見ると愛憐は珠羅を一瞬だが見た気がした。
「仁、流宇、俺と一緒に遊ぼうぜ」
浪は二人の猫剣士を城の外に誘った。
もちろん、城主の華蛇瑠の許可は得ている。
「愛憐さん、よければ、貴女がいた世界の話の続きを聞かせてください」
「いいですよ。……珠羅様も、同席なさいますか?」
華蛇瑠の手前、愛憐は怒っている態度を変えて、普段通りに珠羅に接する事にしたらしい。
「私も、是非同席したい。興味があるのだ」
浪のアドバイス通りに珠羅はとりあえずは愛憐の機嫌取りを下手にするのをやめた。
(二人きりの時に、どうにかなだめられたらそれで良い)
珠羅は、そのように考えを変えて愛憐がいた世界の話を聞く姿勢を貫いた。
愛憐は、16年という年月しか過ごしてきていないので、難しい話題はできないが、スマートフォンだのなんだの便利なツールについて話をすると、二人の陛下は物珍しいので実物を見たがるが、こちらに来る際に不要だと猫神様に没収された事も伝えたところ、非常に残念がった。
その頃、仁は剣士としての腕を上げるために浪と流宇によって特訓を受けている。
「散歩って言ったニャン! なんでこうなるニャン?」
「いかなる時も、とっさに姫を守れるスキルを身につける必要があるだろ。ちびっこ剣士なりに、たくましくなった姿を見せたらあの姫さんは褒美をくれるかもしれないぜ?」
「褒美! 本当かニャン? なら、我はもっと強くなるニャン」
仁には、どうやら褒美という言葉が効くのだという事を、流宇と浪はわかった上でそれを利用して仁にその気にさせる事に成功した。
獣同士、いつの間にか仲良くなった。
話は、愛憐の事になったのだが、これは珠羅と仲良し夫婦に戻って欲しい作戦でもある。
そんな事を知らずに、宮殿では華蛇瑠が席を外した時は、珠羅は愛憐の機嫌の悪い理由を聞いていた。
「目を覚ました時、隣にいるはずの主人がいないのは不安でしたよ。私は、ここの世界はまだまだ知らない事が多いから、珠羅様が頼りなのに……もう……馬鹿」
「馬鹿とはなんだ? こうして謝っているではないか。明日からは、寝ていても起こせば良いのだな?」
「あー、開き直ったー。仁と寝るのでお好きになさってくださいよ」
(どうして、私は素直になれないの? あーあ、こんな事言うつもりなかったのに)
「大丈夫ですか?」
華蛇瑠の付き人の弥蛇が慌てて客間に入ってきた。
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