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宮殿に戻ってくると、愛憐はパタパタと駆け寄って珠羅に抱き着いた。
「お帰りなさい、珠羅様」
「ただいま。愛憐が無事でよかった」
しばし抱擁をしてからそっと身体を離した。
人目がなければネコ耳をもふもふしたり、頬にチューくらいはしていたかもしれないが、珠羅も恋愛経験がないのでリードするなんて事は頭にない。
「華蛇瑠様も、仁たちも無事帰宅なさって一安心しました」
「愛憐さん、我は頑張ったニャン。甘いミルクが飲みたいニャン」
「用意するから待っていてね。皆さん、お疲れ様でした。女性陣は料理を作ってました。もちろん、お風呂もすぐに入れるよう準備は整ってます。どちらを先に済ませたいですか?」
愛憐の小首を傾ける仕種に、珠羅はメロメロなのだが、他の面々がいる手前、ポーカーフェイスを保つ事に必死になる。
「先に料理をいただきたいですね。お腹を空かせた子猫剣士は、戦いが終わってから褒美が欲しいらしいので……」
華蛇瑠が仁を見て、クスクスと笑っている。
「誰の事ニャン? 我は、まだまだ平気だけどニャン。浪もお腹空いたとか言ってたニャン」
仁のお腹がグーとなったので、ごまかしはきかない。
「おい、ちびっこ、なんか言ったか?」
「いいえ……何も言ってませんニャン。放せニャン! 愛憐さん、助けてニャン」
「浪、仁を困らせるのはやめてください。猫神様から叱られたくないのです」
愛憐は、適当な事を言っただけなのに浪はおとなしく仁の首根っこを掴むのをやめて、愛憐の足元にそっと戻した。
「先に料理をいただきましょう」
華蛇瑠も、仁の潤んだ瞳には弱いらしい。
モフが、もしかして最強とか言う?
モフってだけで得するっていいね。
「疲れた身体を癒すには、美味しい料理と、そのあとに入るお風呂ですね」
旅の疲れを癒すには料理と温泉だねと言っているようなものだ。
「ただいま運んできますので、少しお待ち下さい」
愛憐は、お辞儀をすると部屋から出て行き弥蛇たちと料理をせっせと部屋へ運ぶ。
仁も、おとなしく座って待っている。
「カレーライスという料理を作ってみました。お気に召すといいのですが……」
カレー粉の代わりとなるハーブの実をいくつかすり下ろして作ったルウをご飯にかけて食べて、愛憐は異世界の人たちに手本を見せた。
「宮殿の外では何が起きていたのですか?」
「愛憐を横取りしたかったらしくて、私が根気よく話すとやっと諦めてくれた。多分、もう来ないだろうと思う」
そう言ってから、珠羅は一口、口へ運んで味わうようにゆっくりと咀嚼する。
他の者たちもそれに倣って、とりあえず一口食してみた。
「スパイスが効いているが、なかなか美味しい」
「俺は、ちょっと懐かしい味がする。美味いぜ!」
なかなかの高評価だ。
「スパイスは、那蛇さんから少しおすそ分けしてもらって、調合して作りました。浪さんが懐かしいと思うのは、多分、私と同じ日本から来たからだと思います」
仁と琉宇には、小魚を中心とした餌を与えながら愛憐は説明をした。
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