旅先で何が起きている?

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「私は心配ですよ。珠羅殿の奥方がなぜに狙われるのか? また、仁殿の事も一緒にさらおうとしたのはなぜか?」 「華蛇瑠殿の心配されるのも、なんとなくわかりますが、どこから来た異国人なのか? 猫神様のご子息がどうして下界に降りているのか? それが不思議なのでは? ですが、私の妻になった事を知れば、二度と来ないかと思われます。また、万一本人自ら出迎えて来た時は、私から直接話をしましょう」 「うーん、ちょっといいですか? 俺は日本人だから、仲間だったら味方につけたい、とか? あくまでも推測です」  ペロリとカレーを平らげた浪が、二人の陛下に思った事を話してみた。 「そういえば、以前も愛憐と日本人だと話していたな。仮に、先程の者のトップに君臨している王子が、日本人だとして、接点はありそうか?」 「さあ? 考えられるのは、もしや、同じ日本人かもしれないと推測して、惚れたとか言って近づこうと思ったのかもしれないですね」  浪が、そんな事言った時、部屋の外から兵隊の一人が声をかけてきた。 「陛下、また馬に乗った奴がここへ到着して、女を出せと言ってきましたが、いかがいたしましょう?」 「話を聞きたいからと部屋へ通せ。万一に備えてお前らの同行も許す」 華蛇瑠が言うと、兵隊の一人はそのまま下がっていき、しばらくして部屋へ入れた。 「先程は、我が兵士どもが大変失礼しました。私は仕夢の神螺と申す者。羅宇国の陛下、貴殿の奥方に惚れてしまいました。人妻だと聞かされてもなお、恋い焦がれてしまいまして、間近で一目だけでもいいから拝みたいと思い、足を運んできました事許して下さい」  腰を折って深々と頭を下げる。 「私に惚れたのですか? 転生してこの姿になってこちらの世界へ来るなり、行く当てがない私も仁もたどり着いた羅宇国で珠羅様の元に置いていただける事となっただけでなく、面倒見がとても良い等人としての優しさに私も心引かれていき、妻になることを快く快諾したのです。どうか諦めて下さいませんか?」  ニコリと笑顔で愛憐は言った。  仁は、ちゃっかりと愛憐の腕の中からどや顔をしている。 「せめてどこから来たのか教えていただけませんか?」 「日本からですが、あなも、ですか?」  愛憐は、わざと釜をかけた言い方をしてみる。 「そうですよ。私も突然死をした事がきっかけなのか理屈はわかりませんが、日本から突然、こちらの世界へ来てしまいました。剣使いに憧れていたので、ギルドで剣使いを志望したのに何かの手違いで仕夢の宮殿に行けと言われて、抵抗するのも馬鹿らしいので、従う事にしたら、ちょうど王子が亡くなった所で、うり二つの貴方に是非とも王子になって欲しいと頼まれて、今に至るわけです。まあ、生活には困らないしこのままでもいいかと思って過ごしています。そこへ、風の噂で久しぶりに日本から一人やって来るらしい。しかも、猫神様の寛様のご子息も一緒だと……。私は、妻にできたらしたいと思っていたのだけど、すでに既婚者だと聞かされて、貰うのは難しい事はわかったのに……皇帝にも許可を得る必要はあるでしょうけど、友人になるのはどうですか?」 「お前もしつけーな。妻にできないなら友達になれたらいいな? 図々しくねぇ?」 「浪、お前は少し慎みなさい。私と愛憐の問題だ。愛憐と同じ日本人だという事は理解できました。友好関係を築きたいのなら、私のおさめる国とも往来をするという意味で良いのですね?」 (愛憐は、仁の世話係なのは仕方ないとしても、馴れ馴れしくされのは、私は想像するだけで鳥肌が立つのだ。華蛇瑠殿は別だが神螺には下心があるように見えてならぬ)  握りこぶしに、思わず力がこもる。
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