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猫も黙ってないニャン!
愛憐の腕の中で、仁は小さな牙を剥き出しにしてシャーシャーと神螺に威嚇している。
子猫の威嚇は怖くはないのだが、神螺はうるさくて仕方ない。
「珠羅様、仕夢と交遊関係を結んで下さいますか?」
「もちろん、そのつもりだ。我が妻は渡す気はさらさらないが、な。話はこれで終わりか?」
珠羅とて、仁の威嚇が尋常ではない事が気になっている。
「これに目を通してもらうニャン」
どこから出してきたのか、仁は例の書類を神螺に差し出した。
それを受け取り黙読をする神螺。
「我が子に危害を加える者、または、我が子が大切にしている存在(人間、エルフ等種族は問わない)に対して、迷惑行為をする存在がいると発覚した、または、わかった時点で、我が子に代わりそれなりの罪を与える事とする。日本、異世界問わないものとする……猫神様のご子息だったのですね。どうもありがとうございます」
そう言って、神螺は仁に返した。
「私も、そこまで図々しくありません。近々、羅宇国に伺います。それでは失礼します」
「今宵は荒れ模様になるそうだから、気をつけて帰られよ。無事を祈る」
華蛇瑠に言われて、神螺は深々と頭を下げるときびすを返して行ってしまった。
「一時はどうなるかと思ったぜ。それにしても、お前の親って半端ねぇな」
浪は胸を撫で下ろして言った。
「んー、よくわからないけど、パパ猫はすごいニャン」
相変わらず、仁は愛憐の腕の中でどやっている。
「天候不良ですか……羅宇へは、あした戻りましょう」
「その方がよろしいかと。短い時間でしたが、とても有意義である時間を過ごせた事、私によい収穫となりました。今宵は打ち上げといきますか」
どうやら酒が好きなのか、華蛇瑠はジェスチャーでお酒を飲む素振りをしている。
「良いですね。これからの発展のために」
珠羅は、宴が好きらしいので、すぐに意気投合した。
侍女達は、華蛇瑠の合図で、豪華なご馳走を振る舞うため厨房へ集められた。
「私にも何か手伝える事がありませんか?」
愛憐は、仁を床に下ろして厨房へ急いだのだが、来賓にはとてもそのような事はさせられないと言われて、トボトボと肩を落として客間に戻った。
「愛憐さん、どうしたニャン? 意地悪されたニャン?」
「いえ、おとなしくしているよう言われたの。大丈夫だからね」
愛憐は、ニコリと微笑み、しゃがむと仁の頭を撫でた。
先ほど、仁の書類を読み上げられたばかりで、空気は一瞬凍り付きかけたが、愛憐が大丈夫だというので、再び穏やかな空気に戻った。
口には出さないが、浪は内心、愛憐に対する言動を気をつけようと思ったのだった。
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