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しばらくして、料理とお酒と、仁達のご飯まで運ばれてきたのだ。
「おいしそうニャン」
「ちゃんと座って食べようね」
愛憐と仁の様子を見ていた珠羅が、羨ましそうな顔をしているのを浪は見逃さなかった。
「陛下、愛憐さんとの間に子供が欲しいとか考えてます?」
「ま、まさか。何を言うのだ。月日が浅いのに……浪、からかうのは大概にせよ。仁様の鍛練にたまに付き合って差し上げろ。それより、料理を食べているのか?」
「はい、たまに付き合ってあげますよ、あの二匹に。食べてます。愛憐さんを仲間に入れなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫だろう。仁様と流宇の面倒を見ていると楽しそうだ」
等と話しているところへ華蛇瑠が、ワイングラスを片手に笑顔で寄ってきた。
「あした、帰られるのでしょ?」
「そうするつもりです。華蛇瑠殿、二人で募る話でもしますか?」
「いえ、そうではなくて……。その……愛憐殿の猫をもふってみたいと思っています」
「ああ、その事なら私を通さずとも愛憐に聞いて大丈夫ですよ。猫が好きなのですね。もふタイムにしましょうか」
二人の会話を聞きながら、浪はそんなタイム聞いた事ねーよと一人で心の中で突っ込むのだった。
二人の陛下は、愛憐から許可を得て仁をもふり始める。
「にゃあああ、我をおもちゃにするにゃあああ!」
仁は素早く猫パンチを二人に炸裂させるが、痛い、痛いと言いながらも本気で痛がっていない。
それを見ていた流宇が、珠羅の腕を甘噛みした。
同時に、珠羅の脳内にだけ響く声で、我の子に何をしているのだ? と異能を使って話しかけた。
誰も気づいていないのだが、何を隠そう、この流宇こそが仁の父猫もとい、猫神様の化身なのだ。
「っつ!」
珠羅には、軽度の頭痛としか感じないが痛みを感じたので仁のもふもふ攻撃をやめた。
「珠羅様? 大丈夫ですか? 那蛇、夫へ薬を!」
愛憐は、右側の頭をおさえる珠羅の傍に駆けつけた。
それを見ていた流宇は、少しやり過ぎたかとは思ったが、仁から離れたのでよしとした。
華蛇瑠も、珠羅の異変に気づいて仁を執拗にもふるのをやめた。
「これしきの事、大丈夫だ。薬は要らぬ。早いが休ませていただきます」
「お大事になさって下さい。万一に備えて那蛇に薬を用意させます。天候不良の影響かもしれないので……。愛憐殿も、我々と違って体調不良を起こすかもしれないので、那蛇の薬を持って行って下さい。浪殿も、万一の事が考えられるので……」
華蛇瑠は、那蛇に薬を必要な分だけ用意するよう指示した。
こうして宴は終わって、各々、部屋に戻る事にした。
「仁、お前は私と寝るぞ。愛憐様は、珠羅様と同室なのだ。よいな?」
「わかったニャン。流宇……、さっきは何をしたニャン?」
トテトテと四本足で歩きながら仁は聞いた。
何となくだが、猫勘を働かせて先ほどの事が引っ掛かったのでさりげなく問うた。
「軽くお仕置きしただけだ。羅宇に戻るのだから、英気を養う必要がある。小さな剣士でも役に立って貰わないとな」
流宇はクスリと笑った。
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