猫も黙ってないニャン!

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 愛憐と珠羅が乗る馬車の後ろから、仁たちが乗る馬車が着いていく。  その馬車で流宇は仁に説教をしていた。 「えぐえぐ……。流宇なんて嫌いニャン……怒りん坊ニャン……えぐえぐ……愛憐さんのとこにいくニャン……」  出ていく後ろ姿は、哀愁が漂っていて子猫とは思えないほどのオーラだ。 「あーあ、嫌われたな、流宇。いいのかよ? お前が父だって教えなくて」 「浪……お前、知っていたのか? 私があの子猫の父だって事を。少しくらいきつく言っておかないとあの子のためにならんからな。甘やかしはいかんのだ」  心の中では、流宇は仁にきつく叱り過ぎた事を反省しているし、後悔もしている。 「愛憐さん……えぐえぐ……えぐえぐ……」 「まあ、仁、どうしたの? おいで」  愛憐は、仁を膝の上に座らせて話を聞いてみた。 「流宇くんが? 珍しく怒るなんて……でも、礼儀を身につけるのは、今からでも遅くはないの。それはわかった?」 「はいニャン……。でも、お腹すいたから食べたのは、そんなにいけないのかニャン?」 「子供にジッと話を終えるまで待てと言うのは酷だが、仁様、お言葉ですが、仮に仁様が話している最中、愛憐がご飯食べ始めたらどう思いますか?」 「ちょっと嫌だニャン……」  背中を丸めて顔だけを出して仁は、しょんぼりとしながらも考えた事を伝えた。 「そうですね。それと同じなのです。これから同じ過ちをしなければいい話です。それから……流宇は指導者として一人前になって欲しいから時には親のように接してしまうのは、仁様も理解できますか?」  抱かれた愛憐の腕の中で仁は、こくこくと頷いた。  まだ子猫で、甘えたい盛りなのはわかっているが、時には厳しさを持って接する必要がある。 「仁、お (うち)に着いたら流宇くんにお願いしておくよ。だから、仲直りしてね。約束できる?」 「約束ニャン。我は眠くなったから寝ていくニャン」  くあーとあくびをして仁は、愛憐の膝の上で完全に背を丸めて寝てしまった。  どれくらい馬車を走らせていたのか、先の方に宮殿の屋根が見えてきた。  あとすこしで我が家に着く。  その安堵から愛憐は珠羅の肩に頭を乗せてこっくりとし始める。 (おお! やはり女神なのだ! 女神転生の間違いでは?)  珠羅は、愛憐のネコ耳を触ってみる。  ピクッとしたものの起きる気配がなく、珠羅はある程度もふると満足して、仁の背中ももふる事にしたが、軽くに留めておいた。  遠くに見える宮殿を眺めながら、華蛇瑠の言っていたもう一人増えているかもしれないという言葉の意味を考える。 (華蛇瑠殿の事だ。直に良い方に巡り合いましょう。それとも、あれは私たちの間に、家族が増えるという意味なのか?)  恋愛に疎い珠羅は、頭に大きなハテナマークを浮かべたが、首を軽くふり、ハテナマークを打ち消したのだった。
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