羅宇国の後宮に後継ぎはいないのか?

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羅宇国の後宮に後継ぎはいないのか?

 久しぶりの宮殿で、バルコニーから中庭を眺めながら、烏龍茶を飲む愛憐の傍に可憐がいる。  ソワソワと落ち着きがない。 「可憐、どうしたの? 私に何か用があったのでしょ?」  手にしていた湯飲み茶碗を小さなテーブルの上に置いて、愛憐は穏やかな表情を可憐に向ける。  深呼吸をニ、三回繰り返してから可憐は、好きな人が出来たと伝えた。 「相手は誰?」 「今回の旅で一緒になったという浪さんです」  ポッと頬を朱色に染めて可憐は、もじもじとし始める。 「猫と狼って相性いいのかしら?」  妃になった事で可憐を含む侍女や付き人など身の回りの世話をする人たちに対しては敬語を使う事はなくなった。 「どうでしょう? 遠くから眺めるだけでいいんです。お茶のお代わりはいりますか?」 「少しだけお代わりもらうわ。茶菓子があればいいのだけど、ないなら無理に繕わなくて大丈夫よ」 「畏まりました。用意して来ます」  軽く会釈をして可憐は、部屋から出て行った。  可憐と入れ代わって浪が、部屋の外から声をかけてきた。 「愛憐さん、ちょっと時間大丈夫ですか?」 「ええ、大丈夫。入って」  笑顔で浪を部屋の中に入れた。 「旅先で気になった事がありまして__」  浪は、愛憐と同じ日本人だっただけでなく、どこか接点があった可能性が高いと伝えた。 「うーん、どうなのかな? 私は、生前の記憶が曖昧で……」 「少しだけ覗いて見ます?」  浪は、卓を挟んで身を乗り出している。 「でも、水晶がないとできないのでしょ?」 「俺、スキルを持っているので、それ使ったら映像化されて見えますよ」 「少しだけね。怖くなったら止めてもらうわ」  愛憐は、生唾を飲み込んだ。 「了解。多分、大丈夫だと思いますけどね、始めますよ」  そう言って、浪は愛憐の額に手のひらをかざしたところで、可憐が茶菓子などを用意して部屋に入って来たのだが、素早く盆を卓の上に乗せると、失礼しますとソソクサと出て行ってしまった。 (もしかして、浪さんは愛憐さんが妃って知らなくて近づいている? 魅憐に相談してみなくちゃ)  すごい不安といろいろな感情が入り混ざった表情で部屋から出てきた可憐と魅憐は鉢合わせた。 「可憐、どうしたの?」 「あの……ちょっと時間大丈夫?」 「大丈夫。珠羅様はまだ政務が忙しくて、お部屋に誰も入れるなと言っているし……愛憐様へ用事終わったの?」 「それは終わったの。あのね、私に好きな方がいるの。その方と愛憐様は、なんだか楽しそうで……」 「ちょっと場所を変えよう。子猫ちゃんたちに聞かれても困るからね」  魅憐は、可憐の腕を掴むと自分の部屋に連れて来た。 「ここなら大丈夫。続きを聞かせて?」  可憐を椅子に座らせて、自分も椅子を持ってきて傍に座った。 「お茶をお願いされて持って行ったの。私の好きな方が、こう……愛憐様の額を触っていて……胸が張り裂けそうになったの。どうすれば、このモヤモヤはおさまると思う?」  可憐は、魅憐の瞳をまっすぐ見つめている。
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