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珠羅は、目の前の可愛い過ぎる愛憐に内心はかなり鼻息を荒くしているが、冷静さを装って微笑んでからゆっくりと口を開いた。
「浪にも聞かれたのだが、いつかは跡継ぎは欲しいと思う。私は、愛憐の気持ちを大切にしたい。愛憐は、こちらの生活には慣れてきたか?」
「はい、数ヶ月経ってだいぶ慣れてきました。私は、珠羅様のベストタイミングで跡継ぎを作りたいと思えば、心身共に捧げる覚悟は出来ております。仁にもそれとなく言い聞かせておきますか?」
「仁様にも理解をしてもらう必要はあるな。それは、愛憐に任せよう。華蛇瑠殿にも、もしかしたら、今度会う時にはもう一人増えているかもしれないと言われたのだが、二通りの意味があると解釈をした。我々の間に子を授かっているか、華蛇瑠殿にも良き妻が現れるかのどちらかだろうと。今宵は、私と一緒に寝るか?」
「はい。ご一緒させてください」
愛憐は、急に意識したのか頬を赤らめてそう答えた。
その様子を見ていた珠羅は、可愛らしいと思った瞬間、身体は無意識に動き愛憐を抱きしめていた。
「私の理性を吹き飛ばさないでくれ。愛憐を独り占めしたい気持ちに歯止めがきかなくなりそうだ」
珠羅は、愛憐をお姫様抱っこをして寝室に向かう。
いきなりの事で驚いた愛憐は、小さく驚きの声を上げたのだが珠羅の耳には届いていなかったらしい。
沙吏殿の寝室へは、愛憐が来る事はほとんどないが、ほのかな間接的な灯が点されていてなんとも幻想的だ。
いつもの談笑する部屋と繋がっているらしく、素通りして真っすぐ寝室に向かうのは、ある事を意味している。
(今が、ベストタイミングなのですね……)
手入れが隅々行き届いている皺一つない布団の上に、優しく下ろされた。
「私のタイミングで、と言ったな?」
「はい。珠羅様……どうぞよろしくお願いします」
時が来たのだと愛憐は、そっと瞳を閉じた。
ゆっくりと二人の唇が重なった。
シュルリとシルクの紐を解く音が、この静かな部屋に響いて愛憐は、少しばかり恥ずかしい。
気がつくと日付が変わっていて朝になっていた。
少し怠さは残っているものの、起き上がれない程ではない。
昨夜の出来事を思い出すだけで愛憐は、ほんのりと頬を朱色に染める。
愛おしい人と一つになったのだ。
羅宇国の妃になって初めて交えた夜の営み。
愛憐が不安にならないよう優しくリードしてくれた珠羅に、自分は愛されているのだと実感した。
愛憐が疲れているだろうと、そっと肌かけをかけてから寝室を出て行った珠羅の気遣いが嬉しくもあり、ちょっぴり寂しくもあったが、愛憐と違い、珠羅にはやらねばならぬ仕事が山ほどあるのだ。
「外でみゃーみゃーって、仁、お腹すいたのなら、ご飯食べていればいいのに……」
丁寧にたためれた衣服を身にまとい、慣れた手つきで帯を腰のところで締める。
「仁、ご飯なら可憐からもらって食べていてもよかったのに……って、あれ? 仁ではない迷い猫?」
なんとも、この宮殿には猫が集まりやすいらしい。
愛憐は、とりあえず抱っこして可憐たち侍女の待機している部屋に向かった。
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