モフが迷い込んだ

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モフが迷い込んだ

 可憐たち侍女の待機している部屋にたどり着いた愛憐は、軽く部屋のドアをノックした。 「どちら様ですか?」 「愛憐よ。相談があって来たの。忙しいのにごめんなさい」  声の感じから後宮妃が来たとわかり、急いで中からドアを開けて中へ入れてくれる。 「愛憐様が腕に抱っこをしている子は、仁様ではないのですね。いったい、どうしたのです?」  可憐たちに持ち場に着くよう指示をしたベテラン侍女が、愛憐の腕の中を覗きながら聞いてきた。 「私たちの部屋の外で、みゃーみゃー鳴いているところを保護したの。それから、朝食を沙吏殿へ運んで欲しいの。お願いします」 「畏まりました。子猫はこちらで預かり、朝食を後ほど沙吏殿へ運びます」  ベテラン侍女は、慣れた手つきで愛憐から子猫を受けとると中腰になりペコリと頭を下げたら部屋の奥へ姿を消した。  愛憐も、子猫を預けたので沙吏殿へ戻っていく。 「おはようございます。早朝からお疲れ様です、珠羅様」 「おはよう。外が騒がしかったが、大丈夫だったのか?」  椅子に座り、愛憐へ少々険しい顔つきで珠羅は聞いた。 「私は大丈夫です。その事ですが、子猫を保護したのでベテラン侍女へ預けて来たところです。後は彼女たちが面倒を見てくれるでしょう」 「子猫はどこにいたのだ? 愛憐は、手を引っかかれたりしなかったか?」  手を差し出すよう促された愛憐は、珠羅の胸元へ手を差し出すなり、包み込むように手を握り隅々見てからホッと安堵のため息をついた。 「子猫は私たちの寝室の外側にいました。年は仁より幼いかと思われますが、仁と同じ黒猫です」  この時は、まだ子猫だと思っていたのだが、後に黒豹の赤ちゃんだと知る事となる。 「寛様から使いを出されたのかも知れぬ。仁を呼ぼう」 「はい、呼んできます。お仕事はこちらでなさるのですか? 私は遅めの朝食を取るのですが、お邪魔なら仁たちのいる部屋へ移動しますが?」 「たいした仕事量ではないから、食事はここで済ませて構わんよ。今宵も、私に癒しをくれないか?」 「はい。私で癒されてくださいませ。あら、先ほどの侍女が朝食を運んでくださいました」 「妖憐、少々話がある。私たちは、奥の部屋で先ほどの子猫の件で話しているから、ゆっくりと朝食を取っていてくれ」 「あ、はい。わかりました」 「愛憐様、こちらに用意致しました。珠羅様、お待ちくださいませ」  パタパタと慌ただしくベテラン侍女は、珠羅の後を追いかけていく。 (猫神様の事とか詳しそうだけど、どこからそういう情報を得るのか……。後で仁を迎えに行ってこよう)  セルフ形式状態となった朝食を、長テーブルから皿に取り分けて円卓に戻って食べる。  お茶も、長テーブルに置かれた急須から茶碗に注いで飲む。  朝はパン食だからあっという間に食べ終えてしまった。  空いた皿などまとめて置いたら、部屋の外から仁を呼んでくると声をかけて部屋から出ていく。    
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