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「いた。俺より流宇が話を聞いたほうが解決するかもしれないぜ」
「そうかもな。同じ猫科の動物同士、話し合いを試みるとしよう」
「というか、猫神様なのだから、相手だって神様同士話せるんでしょ」
「いつからそれを? まぁ、そのことについては後で聞くとして、行ってくる」
浪は、可憐が来るであろう廊下を見張る事にしている。
ここへきて愛憐以外のネコ耳女性に、なんとなく心が奪われてしまった。
「可憐さん、危ないから俺が沙吏殿まで付き添ってあげる」
「え? あ、その……ありがとうございます。心強いですね」
可憐は、口から心臓が飛び出そうになるほど浪の言葉が嬉しいのだが、まさかここで鉢合わせるとは思っておらず少々びっくりしたのだ。
浪に言われた流宇は、ゆっくりと母豹へ近づいていく。
歩き方は種類が違っても猫科同士、忍び足で近づく姿は豹と区別がつかない。
剣使いの姿から普通の猫姿になっているおかげで、相手は警戒をそれほどしていないようにも思う。
「我が子を返してもらいたい」
「もちろん返すつもりだ。一時的に保護をしていたにすぎないからな。しかし、我が国の皇帝は部類のモフ好きでな説得に時間がかかっている。それにしても、かなり距離がある子霧からどうやって来た?」
「最短ルートがあるとだけ伝えておこう。そなたは猫神様の寛だろう? 私は豹神の美羽だ。夫とともにここへ来たのだがあやつは少々だらしないところがあって灸を据えようと思っていたのに、子どもがぐずってしまって落ち着く場所を探していたら、あの魔法使いに見つかってしまって逃げたらここへ迷い込んでいた。腹を空かせているはずだ」
「それだが、心配はいらん。ここの人間は面倒見がよいので、食べやすく工夫をして食事を与えていた。我が子がライバル視しているようだが、同じ子ども同士仲良くしてもらいたいと願うのは親故だ。しかし、なぜにあの魔法使いから逃げた?」
「我が子を溺愛しすぎるのだ。モフモフ攻撃に合ってしまう。うっかり爪でひっかいたら、そのはずみであの杖をかざしてきたので一瞬にしてここへ来たというか飛ばされたというか……。人間どもは何を話し合っている?」
「親が迎えに来るまで預かっておこうという話をしていたが、あなたを連れて行けば子どもを返してくれると思うので、ともにあそこへ行かないか?」
沙吏殿の方へ顎をしゃくって一緒に行こうと誘ってみる。
「そうだな。私が行かないといつまでたっても解決しないだろう」
流宇の説得に応じる形で母豹の美羽は、沙吏殿へ迎えに行く事にした。
「狼もいるが、大丈夫なのか?」
「あいつは大丈夫だ。元、我々の飼い主なんだ。下界にいた頃の話だがな。わけあって転生してこちらへ来た者の一人らしい」
などと話をしていると、あっという間に沙吏殿へたどり着いてしまった。
母豹の姿を見つけた赤ちゃん豹は、みゃーみゃーと鳴き声をあげる。
「おや、お腹すいたの? 待っていて。そっちに行くから」
美羽は、母親の顔になり我が子へと近づいていく。
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