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美羽の傍へ行った赤ちゃん豹は、早速、お乳を飲みはじめた。
その様子を見ながら、珠羅はこのまま連れて帰ってもらうかとそこにいる人たちに問う。
「私はそうするべきだと思います。最初から親が来たら返す約束なのだから」
愛憐が、まず先に意見を延べた。
「俺もそれがいいと思います。このままいれば懐かれてしまうと、後々帰すのが大変な事になると思うし」
愛憐に賛成したのは浪だ。
仁も、琉宇も異論はないと言う。
仁にいたっては、世話係を取られないで済むという理由もあるかも知れないが。
「落ち着いたら、私が二匹を連れて帰ります」
箒を片手に黒いドレスを着た那蛇が言うと、お乳をあげていた美羽が人型になってこう言った。
「私の子供を貴女のおもちゃにしないで」
どうやら魔法をかけられているらしく、豹から人型に姿を変える事ができるようだ。
「おもちゃだなんて人聞きの悪い事は言わないで。私は可愛いからたくさんもふもふしているだけでしょ」
二人が言い合っていると、みゃーみゃー鳴きながら母豹(今は人型だが)に近づいて、テシテシと足を前足でつつく。
瞬時に豹に戻った美羽は、我が子の顔をぺろぺろと舐めた。
「あの……話し合いはどうしたのよ?」
「ああ、すまないね。この子に鳴かれるとつい、構ってしまいたくなる。あまり揉みくちゃにしないであげて。それから、ここの人間たちには礼を言う。面倒を見てくれてありがとう。光、元のところに帰るよ」
我が子を抱き寄せて、珠羅たちに会釈すると那蛇に向き直って、ここから連れて行って欲しいとお願いをした。
「我々は、できる事をしただけです。あの……帰る前にもふもふしても良いですか?」
モフラーの珠羅は、皇帝である自覚が足りないのか、赤ちゃん豹にもデレッとしているので、愛憐は、咳ばらいをした。
「珠羅様、私にももふらせてくださいね」
「おい、そこのモフラー夫婦。あまり豹を困らせるなっての」
なかなか母豹が返事をしないので、困らせると思い浪は二人に注意をした。
「ここにも、もふもふしたがる人間がいるとは……人に慣れさせないようしつけているのだけど、少しだけなら構わないよ」
抱き抱えたまま我が子を差し出す美羽。
二人は、礼を言うと背中を撫でる。
「我の世話をしてニャン!」
愛憐の足を前足でつつくのは、赤ちゃん豹に嫉妬した仁だ。
「ところで、お前は名前をなんて言うニャン? 我は仁だニャン」
仁が挨拶すると、母豹が反応した。
「あの……猫神様のご子息様ですか?」
「そうニャン。パパ猫の息子ニャン。よくわかったニャン」
「先日、あなた方が子霧に来た時から、ずっと気になってました。ああ、あの寛様のご子息様に会うなんて夢のようです」
瞳を輝かせているのは、尊敬の眼差しだけではなさそうだ。
「主も我をもふりたいのニャン? 少しだけならもふってもいいニャン」
何かを察した仁は、猫姿になった。
本当、仁ってなぜにいろいろな種族にも有名なのだろう?
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