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皇居に入る
羅宇の沙吏殿に皇帝が居ると聞いている。
「何者だ!」
門番らしき人たち二人に門の前で呼び止められた。
「我はこういう者ニャン。覚えておくとよいニャン」
またしても、剣士姿の仁は何やら猫神様から預かった書類を提出したら、門番らしき人はその書類に目を通すなり、遠方遥々良くお出でくださいましたと敬語を使い、仁と愛憐は沙吏殿の中へ通してもらった。
ただの黒猫の子猫ではなさそうなのは、愛憐もなんとなく感じていたが、あなた、何者ですか? 等愚問は辞めておこう。
猫神様は、我が子と言っていたけどただの子供ではないのは、この門番らしき人たちの態度でわかる。
もしかしたら、愛憐以外のここの世界の人たちは、仁が猫神様のお子だという事をあの書類を見ただけでわかるのかもしれない。
愛憐は、仁が提出する書類に何が書かれているかわかっていない。
異世界ってよくわからない。
「珠羅様、寛様のご子息の仁様がお連れ様とお見えになりました」
部屋のドアの前から声をかけると、ややあって部屋の中から声がした。
「下がって良い。仁様、お待ちしてましたぞ」
声に合わせて内側からスーッと襖が開けられたので、愛憐と仁は会釈をして中へ入っていく。
「我の父より話は伺っておりますかニャン?」
仁は、喋り方をけして直さないのだが、相手も不快な表情を浮かべていないので、この世界共通なのだろう。(たぶん)
日本なら、猫がにゃーにゃー言っていたって通じないのだけど、そこが日本と違うという事か。
「はい、寛様から間もなく息子が猫耳の人間を連れて行くと、数日前に手紙をもらっております」
「へ? 私が死ぬことわかってた?」
亡き後、完全に生前の名前は忘れているが、下界から上空(神様がいる世界)へ来た時には、すでに猫耳と猫しっぽがついている姿になっていたのだから、愛憐のような転生した者たちは、死んだという事実は聞かされても、たいていが不慮の事故か何かで転生するので(猫神様曰く)、本人すらいつ死ぬのかわかっていない。
「寛様は偉大なるお方、例えば、今回のように我が子を助けて……という事は想定内だそうです。しかし、突発的に人間が自ら命を落とすというのは、偉大なる寛様と言えども管轄が違うためノータッチだそうですね。それにしても、愛憐様はなんと可愛らしいのだ! 我は気に入った!」
珠羅のこの変わりようって何なのだろう?
愛憐は、ポカーンとしている。
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