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浪が、スキル習得最中、宮殿では医者による問診と診察が行われている。
「月のモノが最後に来たのはいつですか?」
医者の問診に愛憐は少し考えてから、「確か8月の終わり頃です」と答えた。
吐き気はだいぶおさまっていて、顔色も少しずつ良くなってきている。
「今は11月なので、可能性は無くはないですよ。陛下にお知らせしますか?」
医者は、奥の部屋で仕事中の珠羅にも知らせたいと言うのだ。
「今は、お仕事中だと思うので一段落着いてからではどうですか?」
愛憐は、出来るだけ珠羅には仕事に集中してほしいのだ。
自分の体調不良の原因がわかったからと言っても、国のために頑張っている夫に仕事中断してまで来てほしいとは考えていない。
「わかりました。陛下には奥様から直接、お伝えください。私の元で働いている者を派遣いたします。その者でもどうにもならない時は、私を呼んでください。それでは失礼致します」
「ご足労様でした。気をつけてお帰りください」
愛憐は、部屋の外で医者を見送った。
腕利きのようだが、愛憐はどこか冷たさを感じた。
相手の都合を考えられない医者に、今後もお世話になる事があるのかと思うと気が滅入りそうだ。
愛憐は、ご飯を食べていない事に気がついて可憐を呼び出した。
「愛憐様、どうなさいましたか?」
「朝から何も食べていないので、軽く何か作ってくれたら嬉しいのだけど、お願いして大丈夫?」
「少し時間くれたら作って持ってきます。本当に体調はもう良くなったのですか?」
「ええ、だいぶ良くなったの。安心したら何だかお腹がすいちゃって……急がないからね」
しばらくして、可憐が愛憐の食事を運んできた。
「お粥にしてみました。胃に優しい料理がいいと思って……お口に合いますか?」
猫舌で、よく冷ましてから口に運ぶ愛憐に可憐は不安そうに聞いてみた。
「塩加減もちょうどいいわ。ありがとう。ところで、魅憐はどうしているのかわかる? 最近、見かけなくなって心配していたの」
「彼女なら、自分の国に戻って行きました。家族の事情だとかで……元気ならいいのですけどね」
可憐は寂しそうに笑う。
この宮殿にいた歳の近い姉妹のような存在で、しっかり者だったからいきなりの事に可憐は驚いたそうだ。
珠羅としても、断腸の思いだったのだろう。
女として生まれたのだから、親に何かあれば家族を優先するという考えで、宮殿から資金の工面をして少し魅憐に持たせた。
そのような事があったなんて、愛憐は今まで全然知らなかった。
自分が、体調落ち着くまでは魅憐に仁の世話係にしようと考えていたので、誠に残念な事だが、彼女には彼女の都合があるし、元気で過ごしている事を祈った。
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