ご懐妊

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 翌日、愛憐は浪の連れてきた産婦人科医にセカンドオピニオンで、妊娠しているかどうか診てもらった。  「愛憐様、間違いなくご懐妊なさってますよ。三ヵ月に入ったところですね。つわりがあるかも知れませんが、赤ちゃんがお腹の中ですくすくと育っている証拠ですので、心配いりませんよ。陛下には、愛憐様から伝えられますか? 不安なら陛下が一段落ついた頃、私も付き添ってお伝えしますか? どうなさいますか?」  今回の産婦人科医は、愛憐にきちんと考えてもらう質問をしてくる。 「付き添ってお伝えしていただけたら、私も心強いです。お待たせしますけど、それでも大丈夫ですか?」 「私は、大丈夫です。愛憐様の方が不安もあるでしょうし。陛下も喜ばれますよ、きっと」  優しい笑顔で言う産婦人科医に、愛憐はちっとも不安はない。  むしろ、安心する。 「愛憐さん、お腹すいたニャン。もしかして、お客さん来ているのかニャン?」  愛憐にご飯をねだりにきた仁は、知らない顔があったので少し警戒している。 「おや、猫がいるのですね。母体が安定するまでは、飼い猫は別室で、お手伝いさんに世話をしてもらうといいかも知れません」  産婦人科医の言葉に、すぐにピンと来ない仁は、なんで? という顔をしている。 「あのね、仁。家族が増えるから餌は可憐か、浪かはたまた、その辺の従者にきちんともらってね」 「我に仲間が出来るのかニャン? 可憐さんにしばらくご飯もらえばいいんだニャン? おじさんは、愛憐さんのお父さんかニャン?」  仁は、産婦人科医の事をおじさんと言って、愛憐はヒヤヒヤしているが、産婦人科医はニコッと笑って説明をした。 「ニャンと! 愛憐さんはママになるのか。おめでとうニャン」  祝福するも、お腹がすいている仁は、可憐のところに行ってくると言って部屋から出て行った。 「言葉を話せる猫を初めて見ました。だけど、普通の猫と違って小さな剣士のようにも見えましたが、先ほどの方は種族はなんですか?」  隠れモフラーなのか、産婦人科医は愛憐に仁の事を聞いてきた。 「ネコ型の生き物です。時には猫になれます。私も、種族は疎くよくわからないのですが……。あの、話を戻していいですか?」  仁が来たので話がそれてしまったので、愛憐からそれとなく話を妊娠報告に戻した。 「私も、猫などが好きなもので話がそれてすみませんでした。陛下のお休みの日がわかればその時に、私も同席して……という流れで大丈夫ですか?」 「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」  愛憐が挨拶すると、産婦人科医は笑顔で部屋を後にした。
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