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隣国から祝福
愛憐の体調が落ち着いてきたある日、子霧から華蛇瑠が羅宇を訪ねてきた。
「華蛇瑠殿、ようこそお越しくださいました。おや? 一人ではないのですね?」
珠羅自ら華蛇瑠を出迎えている。
「私にも、妻が出来たのですよ。珠羅殿のところで以前お世話になっていたとか」
「魅憐ではないか? ご無沙汰していたが元気そうで何よりだ」
「はい、珠羅陛下、お久しぶりです。こたびは愛憐様がおめでとうございます。私は、華蛇瑠様の妻になりました。まさか、このような形で再会するとは思わなかったですが、お変わりなさそうで安心しました」
その間に、可憐はせっせとお茶と茶菓子を用意している。
愛憐も手伝うと申し出たのだが、身体に障るといけないからとやんわり断った。
お腹が少し目立って来た愛憐は、つわりはほとんどないのだが、可憐はとても心配している。
仁にもたまに触れたりしても、猫の毛は身体によくないとかで、珠羅以上に愛憐の身体を気遣う。
華蛇瑠が訪問して来たので、愛憐も挨拶だけはさせてほしいとお願いし、やっとそれができるのだ。
「珠羅様、ご用意が出来ました」
侍女を兼任している可憐は忙しい。
「立ち話もなんだから、どうか私たちの部屋でくつろいでください」
珠羅は、二人を快く部屋に招き入れる。
「華蛇瑠様、お久しぶりです。魅憐さんも久しぶりね。会えなくなってどうしているかな? って思っていたら華蛇瑠様とご一緒で驚いたけど安心したわ」
愛憐は、二人のためにとお茶と茶菓子が用意されたトレーを、円卓の上に置き慣れた手つきでそれぞれの前に置いた。
「愛憐さん……いえ、愛憐様、突然姿を消した私を覚えていてくれたのですか? 嬉しいです」
そう話すとホロホロと涙を流す。
「忘れるわけないでしょ。こうして再会出来たの、奇跡って言うのよ。もう……私まで泣きそう……あら、嫌だわ……」
「愛憐も、魅憐につられて嬉しく涙を流して……。確かにあの時は、きちんとしたお別れが出来てなかったからな……これで涙を拭いてくれ」
珠羅は、絹のハンカチを愛憐に渡すと「ありがとうございます」と受け取り涙を拭う。
四人は、積もる話があり愛憐もついつい長話に盛り上がっているのだが、珠羅がお腹の子に障っても困るからそろそろ休んだらどうかと気遣かってきた。
「そうですよ。愛憐殿、いくら安定期に入っていると言っても、睡眠不足では母体に障りますし、ほどほどになさってください」
華蛇瑠までが、心配して言ってくれているのは伝わってきた。
「病気じゃないから大丈夫ですよ。お腹の子はおとなしくなりました。あと少しだけいいでしょ? 魅憐ともなかなか会えないからまだ話していたいです」
愛憐は、頬をぷくっと膨らませたので、愛くるしく思った珠羅は、もふりたい気持ちを抑えて少しだけ話して部屋に行く事を約束させた。
「では、奥方だけで話されてはどうですか? そうすれば、気兼ねなく話せるでしょう?」
「それもそうですね。愛憐、魅憐と部屋で話をしたら良いのかもしれぬ。仁も寂しがるだろうから、どうだろうか?」
「そうします。珠羅様も、華蛇瑠様と男同士の話がありますもんね。では、魅憐、部屋で話そう」
ちょっとだけ愛憐はいじけてそう言ったが、珠羅には気付かなかったらしい。
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