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玖茶呂殿に久しぶりに来た愛憐は、仁に飛びつかれて苦笑いをした。
「愛憐さん……誰?」
「前までここにいた魅憐よ。仁は覚えてないかもしれないわね。可憐から餌をもらったの?」
目線を合わせて頭を撫でながら、仁に聞いてみた。
「くれたニャン。部屋に来てよかったのかニャン?」
飛びついたかと思えば、仁はサッと愛憐から離れた。
「ええ、大丈夫よ。魅憐、椅子に座ってくつろいで」
「ありがとうございます。仁様をもふもふしていいですか?」
隠れモフラーの魅憐は、傍に寄ってきた仁をもふりたいのかうずうずしている。
「もちろんよ。それにしても、しばらく会わなかったうちに、美人に磨きかかったんじゃない?」
魅憐の向かいに座った愛憐は、部屋に用意されてあった茶菓子をそれぞれの前に置いた。
「そんな事ないですよ。そう見えるとしたら、恋をしているからですかね」
魅憐は、クスクスと笑って一息つくために茶菓子を食べてお茶を飲んだ。
「愛憐様は、いつお生まれになるのですか?」
「来年の春を予定しているわ。お腹で動くと生きてるって思って、まだ会ってないのに愛おしく思うの。早く産んでこの手で抱きしめてみたい。ねぇ、魅憐も、もしかして……」
愛憐は、女の勘で魅憐も妊娠しているのではと思って聞いてみた。
「お察しの通りです。間もなく五ヶ月に入ります。私は、来年の夏に生まれる予定です。お互いに、生まれてくる赤ちゃんのお披露目出来たらいいですね。そろそろ、おいとまします」
「あら、そう? よかったら一晩泊まって帰ったら? 日帰りだと疲れてしまうでしょう?」
愛憐は、どうにかして引き止めようと試みるのだが、魅憐は長居する方が胎教に良くないとやんわりと言って、会釈をすれば部屋から出ていくので、愛憐は後を追い掛ける。
「大丈夫です。華陀瑠様と一緒に帰りますので、ここでお見送りは遠慮ください。そうしないと別れが辛くなります」
「そう……。くれぐれも身体には気をつけてね。元気でね」
愛憐は、部屋の外で見送った。
慌ただしい訪問があったが、魅憐の元気そうな姿を見られた事はよかったと思う愛憐なのだ。
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