皇居に入る

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 仁が、愛憐にしゃがむようジェスチャーをし、屈めさせると珠羅に気付かれないように、部類のもふもふ好きだと教えてくれた。 「あの……、珠羅様……わたしを気にいっていただき、光栄に思います」  ちょうど屈んでいるので、そのままお礼を述べると頭を上げるよう言われて、愛憐は頭を上げる。 「礼を述べられるような事など我は何も言っていない。本当、可愛らしく思ったのだ。沙吏殿にようこそ。疲れているであろう」  パンパンと、珠羅が手を叩くと部屋のドアが開き先ほどの門番らしき人とは違う衣装を身にまとった女性が、屈んで何用かと珠羅に聞いている。 「寛様のご子息様達がお見えになったので、茶菓子でも用意いたせ。我の部屋でくつろぎながら話がしたいのだ」 「畏まりました。ただいま、用意して参りますので、暫しお待ちくださいませ」  そう言って女性は下がっていった。 「先ほどの女性も、獣耳だったニャン。犬か何かかニャン?」 「さすがは猫神様のご子息でおられる。その通り、先ほどの者は犬耳の可憐という。猫と犬は対立関係にあるそうだが?」 「一般的にはそうみたいだニャン。だけど、我は違いますニャン。珠羅様の使いの人たちはみな、あのような獣耳女子が多いのですかニャン?」  剣士姿の仁は、どうも思っていないらしい。 「動物愛が強いのも関係しているのか、自然と集まってきたのだ。愛憐様にも、付き人をつけさせよう。本当、ここにいるどの獣耳女子の中でも愛憐様は可愛らしい。あの……その猫耳をもふっても大丈夫だろうか?」 「珠羅様の気が済むまで、どうぞ触って堪能してください」  よくわからないが、機嫌を損ねさせないために愛憐は、自分の許容範囲内なら好きにさせようと思っている。 「少しだけ……」  そう言って愛憐の傍に近づいた時、部屋のドアがノックされて失礼しますと、先ほどの女性が茶菓子を盆に乗せて中へ入ってきた。 「可憐、茶会が済んだら愛憐様にお召し物を……それから、仁様にもお召し物を頼むぞ」  何事もなかったかのように振る舞う珠羅。  ちょっと違和感を感じながらも、可憐と呼ばれた女性(以下、可憐)は、会釈をすると部屋から出ていった。 「さぞかし、遠いところからはるばるやってきて疲れただろう。仁様、小さなバスタブを用意させるのでゆっくりとなさったらどうだ?」 「我は愛憐さんと一緒がいいニャン。愛憐さんは、我の世話係に任命したので、そうしたいのニャン。せっかくのご好意なのに申し訳ございませんニャン」  しょんぼりと肩を落とす仁だが、子猫は何をしても可愛く許される。 「愛憐様が、仁様の世話係とな……。でしたら、お部屋も一緒が良いやもしれぬな。ところで、お二方、お腹は空いておらぬか?」 「我はお腹空いているニャン。愛憐さんは?」 「わたしも、お腹空いております。珠羅様も、お食事をなさいますか?」 「うむ。せっかくなのだから、大広間に移動して皆で食事をするとしよう」  珠羅が、再び手をパンパンと叩くと先ほどの可憐が、部屋のドアを開けて中に入ってきた。
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