皇居での生活が始まる

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皇居での生活が始まる

 案内された玖荼呂殿は、先ほどの沙吏殿と部屋の間取りが少し違う。  天蓋付きベッドと鏡台、小さな箪笥と諸々小物が置けるような台が二つ設置してある。  女性向きな作りなのか、壁色も淡いピンク色だ。 「珠羅様から、侍女になるよう言われております。何かご用があれば台の上の(りん)を鳴らしてください。私以外に、もう一人侍女として魅憐という者をつけます。私は兼任する事になるので、私が手が空かない場合、魅憐(みれん)が対応する事になっているはずです。それでは、こちらのお召し物を置いておきますので、あしたからこちらのお召し物で過ごされてください。髪もあしたから結い上げます。ランプをベッド脇に一台用意してありますので、かわや(トイレの事)等に夜遅く行かれる場合や、天気が悪く薄ぐらい日は、ご使用ください。それでは、質問がなければ私はこれで失礼させていただきますが?」 「仁の猫用トイレ等を部屋に置いても大丈夫ですか? こちらへ来る前に持参して来たのですが……」 「大丈夫です。また何かご用があれば何なりと申し付けください」 「はい、わかりました。お休みなさい」  愛憐は、生前の時の習慣で夜の挨拶をしたつもりだったが、いえ、私はまだ仕事中なので休むわけにはいきませんと言われてしまった。 「私がいた所では、夜になって誰にも邪魔をされずに完全にくつろぐ時の挨拶です。忙しい中、いろいろありがとうございました。またあしたから改めてお世話になります。よろしくお願いします」 「こちらこそ、明日以降もよろしくお願いします。では、お休みなさい」  そう言って可憐は、部屋から出ていった。 「なんだか、一気にいろいろありすぎて疲れたな」  ボフッとフカフカのベッドの上に腰を下ろした。 「我も、なんだか眠いニャン。お休みなさいニャン」  愛憐が用意したねこちぐらに仁は入っていき、丸くなりスヤスヤと寝息を立てて寝てしまったようだ。  天蓋付きベッドは初めてで、瞼を閉じてもすぐには寝付けそうにない。  愛憐には何もかもが初めてなので、疲れているはずなのに目が冴えてしまう。 「仁はいいよね、猫なんだから。私は……獣と人間のハーフ? 見た目は、人間でネコ耳とネコしっぽが生えている変な生き物だ。猫神様の好みで変えたとか言ってたけど、ここの皇帝もかなりの変わり者には違いないよね。異世界の人たちって、変わったのが好きなの?」  愛憐は、ぶつぶつ一人囁く。  仁が寝ていてよかった。  仮に、仁が起きていたら「愛憐さん、頭大丈夫かニャン?」とか聞かれただろう。 「あふ……」  愛憐は小さく欠伸をして瞼を閉じてみる。
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