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悲劇は幕を閉じる
その時、急に強風が僕らを襲った。
僕は体制を崩し、足から地面が離れてしまう。
「……あ」
落ちる。
感覚的にそう感じた。
でも、これでいいと思った。
怖さは不思議となかった。
それで目を閉じていたのに、手を掴まれて、はっと我に返る。
彼女は僕が落ちる寸前に僕の手を引いて、屋上へと引き返して。
そして、彼女はその反動で。
横から、落ちていくのが見えた。
「……え……?」
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
僕は振り返って下を見る。
落ちていく彼女。
でも……もう僕の手の届く範囲ではない。
必死に手を伸ばすが、無理だとわかった。
また、また僕は繰り返すのか?
嫌だ、繰り返したくない。
もう二度と、人を死なせたくなんてない。
そうだ、下に行けば、彼女を受け止めるかもしれない。
そう思って、急いで屋上から出て、外へ出る。
……が、時はもう、遅かった。
無惨な姿になった彼女はもう、ピクリとも動かなかった。
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