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後日談
数年後。
僕は高校を卒業したあと、サラリーマンをしている。
彼女のことは、今でも覚えている。
あのときは気が動転して考えられなかったが、きっと彼女は「命をかける」という僕に、同じく情を抱いていたんだろう。
だけど、男の僕を持ち上げるなんてか弱い女の子にはできないことだ。
だから、自分の体重を使って、僕を助けた。
僕は彼女に助けられたのだ。
「……今日も来たよ」
僕は持ってきた花を墓に供える。
彼女は天国でも同じようなことをしていないといいけれど。
線香を供えて、手を合わせる。
もう、この死者を悼む素振りを、何回続けてきたのだろう。
彼女が死んでから、僕は毎日のように墓参りに来ていたのだ。
もう数なんて数えてない。
「……あの時、君が助けてくれなかったら、今の僕はいない
……けれど、どうせなら、君と生きてみたかったな……なんて
まぁ、叶わない願いだろうけど……ね」
僕が悲しげにそう俯いて言うと、「お兄さん」という甲高い声が聞こえた。
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