いつも通りの光景に

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「……」  いつも彼女を無言で眺める日々。 そんなある日、彼女が植物係だからか、学校の中庭で花に水をやっているのを見かけた。 「……あ、あのさ」 僕は初めて彼女に声をかけた。 少し心配してたのもあるし、いじめを受けているなら助けてあげたいとも思った。 「……え、私?」 なんで話しかけられたんだろう、と言いたげに彼女はびっくりしている。 「……そう、君だよ、七瀬さん」 彼女は名前も覚えられてたことに感銘を受けたのか、泣きそうな顔をした。 そんなことに僕は気づかず、こう言ってしまう。 「え、ごめん、僕、なにかした…?」 彼女は首を横に振る。 「ううん、嬉しかっただけ」 涙を拭いながら、そういって笑う彼女に僕も笑顔を向けた。 「……あの……私になにか……?」 彼女にそう言われて、僕は思い出したように「あぁ!」と言って続ける。 「えっと……その……お、お友達にならないかなーって……」 彼女はそれを聞いて目を丸くした。 「……本気で……言ってるの?」 彼女の声は震えていた。 「わ、私! 私のそばにいたらみんな、みんな不幸になっちゃうの! だ、だからその……やめたほうが……」 そんなことを言う彼女に僕は笑顔で答える。 「大丈夫、そんなこと僕は信じてないから」 彼女はそれでも僕を止めようとしたが、僕が怯まないせいか、渋々OKしてくれた。 「じゃあ、今日一緒に帰ろっか」 僕がそう言うと、彼女は驚く。 「え、で、でも……」 俯く彼女に僕は言う。 「大丈夫だって! ね?」 僕が笑ってみせると、彼女もぎこちない笑顔だったが、笑ってくれた。 そして僕は彼女に教室に戻ることを告げ、手を振りながらその場をあとにした。
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