彼女のため

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彼女のため

 放課後。 彼女は校門の前で待っていてくれた。 「おまたせ、待っててくれたんだ」 僕が言うと彼女は俯きながら言う。 「ま、まあね……」 そして彼女は顔を上げて笑った。 「……何から話す?」 いつも最初に話題を振ってきてくれたのは彼女だった。 それからというものの、楽しい時間が過ぎた。 毎日のように彼女と帰るようになり、彼女のことを知っていく日々。 いつの日か、これが楽しみになっていった。  だけど、ある日を境に彼女は、学校に来なくなった。 僕はその日、彼女の家を訪れることにした。 彼女の家は、帰り道に何度か場所を教えてもらっていた。 本当に行くことはなくても、家の場所まで教えてくれるなんて。 そこまで心を開いてくれたんだなぁ……。 そんなふうに思うと、少しだけ足取りが軽くなる。 「……ここか」 日本家屋の二階建ての家だった。 結構ボロボロで、本当に人が住んでるのかすら怪しい。 一見幽霊屋敷にも見える。 電気もついてすらいない。 ピンポーン。 インターホンを押すが、返事もない。 「……ごめんくださーい」 何度か呼びかけても出ない。 留守なのだろうか? そもそも住んでないとか? あれが嘘だったとか? いや、そんなはずはない。 それだと、彼女が学校に来なくなったことが謎となって残ってしまう。 ……もしかして、虐待で受けてるんだろうか。 彼女の腕には、たまに無数の傷がついていた。 もしかしたら……。 すると、中から怒鳴り声が聞こえた。 彼女の両親だろうか? 僕は耳を澄ましてよく聞いてみた。
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