過去

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過去

 中学の頃、僕には好きな女の子がいた。 彼女の名前は新島 菜々花(にいじま ななか)。 ある日を境に転校してきた彼女は、笑顔が魅力的だと一気に学校中のマドンナになった。 でも、そんな彼女に嫉妬したのか、女子たちがよく彼女をいじめるようになった。 僕は彼女に話しかけたかったが、いじめを受けてる彼女に、近寄ることすらできなかった。 そんなある日、彼女が一人でいるところを見かけた。 僕は彼女に話しかけた。 「あ、あのさ」 彼女はニコッと笑う。 「なあに?」 ぎこちなく、苦しい、辛い、本当は助けてほしい、と訴えるような、目が笑っていない笑顔。 本当に苦しいんだなと、僕はその時、本当に理解した。 「……今、時間あるかな?」 僕が聞くと、彼女は周りをキョロキョロしてから答えた。 「……ごめんなさい、用事があるから」 彼女は悲しげに答えた。 今になって気づいたが、あの時おそらく、彼女をいじめていた女子たちが近くにいたんだろう。 思えば、あの時話しかけなかったら、と後悔している。 あの時を境に、彼女のいじめはより一層激しくなったのだ。  帰ろうとしたある日、昇降口の靴箱を見ると手紙が入っていた。 『屋上に来てください 話があります 新島 菜々花』 「……なんだろう?」 彼女から呼び出しなんて、一度もされたことなかった僕は、少しだけ期待しながら、軽い足取りで屋上へと向かった。
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