始まりの日

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始まりの日

 この日が来ることはわかっていたの。でも彼女に打ち明けるつもりはなかった。だってあの子には好きな人がいて、私も困らせるつもりはなかったから。 * * * *  大学二年の夏の合宿最終日のこと。外でバーベキューをしながら、皆楽しそうに過ごしていた。  その最後の夜に、千鶴(ちづる)は嬉しそうに顔を赤くしてこう言った。 「大和(やまと)先輩と付き合うことになったの」  興奮しながら祝福する美琴に対し、紗世(さよ)は言葉を失った。  あぁ、とうとうこの日が来たのね……。  紗世は精一杯の笑顔を浮かべて、千鶴の顔を見る。 「おめでとう! 良かったね〜!」 「うん、ありがとう! これも応援してくれた二人のおかげだよ〜。でね、今夜は大和先輩と一緒に過ごしてもいいかな……?」 「……いいけど、付き合って初日に体を許しちゃダメよ」  お伺いを立てるような様子の千鶴に対し、美琴(みこと)はしっかり釘を刺す。 「も、もちろん!」 「ならいいんじゃない? ねっ、紗世」 「……まぁせっかく合宿最後の夜だしね。私も美琴ちゃんと同意見かな」  二人の言葉に千鶴は満面の笑みを返すのだった。
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