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合宿で借りていたのは湖の近くにある小さな古いホテルだった。専用の遊歩道もついているので、散歩コースにちょうど良い。
バーベキューの片付けも終わり、千鶴は大和と二人で楽しそうにしているし、美琴は兄の健に雑用を頼まれいなくなってしまった。
紗世はホテルを出て、ふらっとその遊歩道に入っていく。道の端に等間隔で灯りが灯されてるため怖くはなかった。
湖のほとりは、小石がゴロゴロとしていて歩きにくい。人目につかない場所まで歩いて行くと、紗世はその場に座り込む。すると突然涙が溢れ出し止まらなくなった。
本当はずっと千鶴ちゃんのことが好きだった。そばにいられるだけで嬉しかった。でも関係を壊したくなくて黙ってた。
いつか千鶴ちゃんに彼氏が出来たら諦める……そう心に決めていた。
それが今夜だなんて……唐突にやってきたこの日を、まだ受け止めきれない。
「紗世ちゃん?」
突然背後から声をかけられ、紗世は驚いて振り返る。そこには心配そうな顔をした波斗が立っていた。
「一人で出て行くのが見えてさ、危ない気がして追いかけてきちゃったよ……」
波斗はゆっくり紗世に近付くと、隣に腰を下ろす。
「……何かあったの? あっ、別に下心とかないよ。ただ心配なだけだから」
慌てて話す波斗を見て、紗世は泣きながら吹き出してしまう。
「大丈夫です。波斗先輩がそんな人じゃないのはよくわかってるもの」
波斗はサークルのなかでも人気がある。イケメン、高身長、控えめで優しくて穏やかで、それに加えて天然なところがありかわいい。性別問わず、誰もが波斗を好きだった。もちろん紗世も頼りになる先輩として慕っていた。
その波斗が急に辛そうな表情になる。
「もしかしてさ、千鶴ちゃんから聞いた……?」
紗世は驚いた。もしかして私の気持ち、気付かれていた?
波斗は紗世の頭を撫でるように手を乗せる。その表情に紗世はドキッとした。いつも笑顔で優しい波斗がこんな切ない顔をするなんて初めて見たのだ。
「紗世ちゃんも、大和君が好きだったの?」
しかし波斗の思いがけないセリフに、紗世は驚き硬直する。
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