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1月14日(勝利)
授業が終わり帰ろうとした時に奈緒が話し掛けてきた。
「勝利、今日文房具屋に付き合ってよ」
「耕太と祐輔もいいか?」
「今日は出来たら勝利に来て欲しいんだけど」
「何で?」
「前に買い物の途中に置いてきぼりにした埋め合わせをしてもらおうと思ってるんだけど」
「何だよそれ」
「お年玉入ったんだから、鉛筆の1本や2本買ってくれてもいいでしょ!」
まあ鉛筆なら安いからいいか
「分かったよ。そのかわり絶対に鉛筆だけだからな!」
「うん。じゃあ校門で待ってるよ」
奈緒は教室を出て行った。
耕太に黙って行くと、変に疑われるから言いづらい
耕太と祐輔が教室に入ってきた。
耕太「今日はグラウンドで練習しようぜ!」
「あっごめん。今日は用事があったの忘れてた。だから先に帰るよ。」
耕太「例の莉乃ちゃんか?」
「まあそんなとこだよ」
と言って、走って僕も教室を出て行った。
なんか罪悪感を感じる
校門に奈緒が待っていたので、そのまま駅前にある文房具店を目指して歩き出した。
「コンビニの鉛筆ではダメなのかよ?」
「ダメ!可愛くないもん」
まあいいか
歩きながら、
「ところで、どの高校行くんだよ?都立高か?」
「だから内緒よ。」
以前、祐輔の言葉が引っかかっていたので聞いてみる
「お前さあ、心城学園に推薦が来たのに、断ったのは俺と耕太のせいか?」
「う〜ん。確かにそうかも知れないわ」
まさか本当にそうだったのか!
「何かごめん。」
と謝った。
「別に謝ることでは無いよ。だって私は高校でやりたい事があるんだもん。」
「何やりたんだよ」
文房具店が見えてきた。
「ほら、行くわよ!」
と言って、答えを言わずに文房具店に走って行った。
僕は歩いて文房具店に入ると、奈緒は鉛筆売場で商品を眺めている。
奈緒が見ている場所は、受験鉛筆と書かれたエリアで、頑張れ!や、もう一息!等の一言が書かれた鉛筆だ。
「決まったか?」
「う〜ん。どっちにしようか迷ってるの」
「2つだろ?」
「ううん3つになっちゃった。」
「じゃあいいよ。3つ買ってやるよ」
「本当!ありがとう」
と言って、奈緒が3本の鉛筆を持ってレジに行く。
レジ打ちをしている女性に
「袋はいいです。」
と言って鞄に入れようとしていた。
何の言葉の鉛筆を買ったのか聞こうとしたら、店員が「324円になります。」
と僕に言ってきた。
1本100円もするのか!
渋々財布から500円玉を差し出した。
良かった、お金が足りた。
そしてお釣りを貰い、奈緒の方を向くと
満面の笑みを浮かべる奈緒を見て、一瞬「ドキッ」としてしまい、1本100円もした鉛筆を選んだ事に、文句を言おうとしたが、すっかり忘れてしまっていた。
「ところで何て書いてある鉛筆買ったんだよ?」
「え〜じゃあ2本だけ見せてあげる。あっ!あそこの喫茶店に寄ろうか?あそこのパフェうまいんだよ。
しょうがないからパフェは私が奢ってあげる」
駅前の大通りから一本裏の道にある小さな喫茶店に奈緒が入って行く。
喫茶店の入口横には、外の客に分かるように、小ウィンドウにメニューが並んでいる。
パフェやスパゲティ、ピラフなどの作り物の品物が飾られていて、フルーツパフェは、600円と書かれたプレートが前に置いてあった。
フルーツパフェって高いんだな
と普段男同士では頼まないパフェの値段に驚いた。
パフェの値段に驚きながら、先に店へ入った奈緒の後に続く。
席に座ると、すぐに水を持って、ウェイトレスがテーブルに運んできた。
すると奈緒が
「フルーツパフェ2つ下さい」
!
「お前、1個600円だぞ!」
「ウチは親戚が多いから、お年玉が沢山入ったから」
「じゃあ鉛筆だって自分で買えるだろ!」
「それはそれ、これはこれよ」
「何だそりゃ?それより何て書いてある鉛筆買ったんだよ」
「えっ知りたい?」
「別に」
「じゃあ見せない」
「ちょっと知りたい」
「本当に勝利は素直じゃないんだから。じゃあ2本だけ見せてあげる。」
と言って、鞄を開けて鉛筆を取り出した。
鉛筆には
(合格)
(頑張れ!)
と書かれていた。
「そうだよな、奈緒は受験生だもんな。でっ、都立は試験いつだっけ?」
「明日よ」
「えっ都立はまだ先だろ?」
「だから、明日の私立の試験に行くのよ」
奈緒は都立高校だと思っていたので、意外だった。
「明日って?お前こんな事してていいのかよ?」
「今更、勉強したって、変わらないよ」
すると、店員がフルーツパフェを2つテーブルに運んできた。
うまそう!
「勝利はフルーツ好きだもんね。」
「それと、このパフェのお金は、俺が払うからな。ただ今はお金を持ってないから、後で払うよ」
実は今日の財布の中は500円しか入っていなかったので、今の状況では精一杯の見栄だった。
「じゃあ今度奢ってよ。私がお金が無い時に誘うから」
「しょうがない。そういう事にしてやる」
何故か、奈緒は笑みを浮かべる。
「どう?美味しい?」
「うん。マジでうまい」
「良かった」
と微笑んだ。
そして、パフェを食べ終えて、店を出た。しばらく歩き、奈緒のマンション前まで送り
「じゃあ、明日頑張れよ!」
とエールを送り別れたのであった。
奈緒が1200円出したのに、300円の鉛筆を選んだ奈緒に文句を言おうとしていた自分が、つくづく小ちゃい男だと認識したのであった。
1月15日(私立試験)(奈緒)
今日はいよいよ試験当日。
父が心配して試験会場まで車で送ってくれた。
「パパありがとう。ここでいいよ」
「落ち着いて頑張んな」
「うん」
車を降りて学校の校門を通り過ぎて試験会場の案内を見ながら、教室を探す。
55番、55番
あっ!こっちか
55番の受験番号が分かった時はビックリした。
勝利の誕生日である5月5日だったからだ。
あっここだ!
試験会場の教室を見つけ、気合いを入れた。
よし!
私は55番と書かれた席に座った。
午前中は英語、数学、国語の3教科の筆記試験があり、
午後からは、面接が行なわれる。
私は昨日買ってもらった鉛筆を机の上に置いた。
鉛筆に書いてある言葉を見て、気合いを入れる。
鉛筆に書かれた言葉は
「合格」
「頑張れ!」
そして
「勝利」
私は勝利と書かれた鉛筆を選び、消しゴムとセットで机の上に置いた。
そして、その他の鉛筆は筆箱にしまった。
刻一刻と試験開始時間が迫ってくる。
緊張してくると、鉛筆の勝利の文字を眺めて心を落ち着かせた。
試験官の先生が入って来て
問題用紙を配り始める。
学校のチャイムが鳴って、試験が始まった。
(1科目目)英語
(2科目目)数学
(3科目目)国語
全ての科目に、手応えを感じた。
3教科の試験が終わると昼食の時間となり、いくらか場の雰囲気には慣れてきているものの、知らない人と話す勇気もなく、ただ黙って家から持ってきたお弁当を食べて、午後の面接に備える。
しゃべれるかな?
一度そう考えると、不安が積もっていく。この長い昼休みは緊張度をMAXにするには充分な時間であった。
昼休みが終わり面接が始まる。
この学校では、5人ずつ面接を行なっていく形式をとっている。今の私は、一人で面接部屋に入らなくて良いので、気が楽と考えれば良いものの、もし変な回答をしてしまった時には、5倍の恥ずかしさを味わうのではと考えてしまう。
昼休みに積もった不安は、全てにおいてネガティブな発想へと変えてしまっていた。
1〜5の組が始まり46〜50まで進んだ。
次だ
胸の鼓動が激しくなってきた。
勝利、助けて!
そして、試験官が
「はい、次は51〜54までの方、面接室に入って下さい。」
えっ!
何で呼ばれないのか、試験官に聞こうとしたが、とてもそんな勇気は無く、その場で受験番号の55を呼ばれるのを待った。
51〜54の面接が終わり、緊張から解放された生徒が出て来た。
「55番、入って下さい。」
一人!
胸の鼓動が更にヒートアップしてきた。
少し震えた手でドアをノックして、中からの指示に従いドアを開けて前に置いてある椅子の横に立ち
「受験番号55 飯嶋奈緒です。よろしくお願いします。」
と言って、お辞儀をする。
いくらか声が震えてしまった。
真ん中に座っている、スーツを着た小太りの中年男性が「掛けてください」
と言ったので
「失礼します」
と席に座る。
するとまた真ん中の人が
「そんなに緊張しないでね」
と、今まで面接の練習では無かった言葉を掛けてきた。
本来ならば、志望動機や中学での活動等を聞かれるのだが、この面接は違った。
5人いる面接官で、全て真ん中の小太りの先生が質問をしてくる。
「君は吹奏楽で推薦を出したと思うけど、一般入試で本当にいいのかね?」
全く予想もしない質問だったが、私はありのままの気持ちを伝えた。
「はい。高校では吹奏楽をやりませんので、お断りさせていただきました。」
「実は君の担任へ推薦入学の間違えではないか確認の電話をしたんだが、高校はウチしか受けないと聞いて、正直よく分からなかったんだ。君の内申点だと、私が言うのもおかしいけど、他の学校も充分行ける学力があると思うんだが、この学校に吹奏楽以外で何か目的があるのかい?」
「はい、私は野球部に入ります。マネージャーになって、甲子園のベンチに座りたいんです。そして日本一になる瞬間をベンチで味わいたくて、心城学園に希望を出しました。」
「そういう事ですか」
真ん中の人以外は、何を言っているんだという表情をしている。
私も我に返り、面接だった事に気付く。
「申し訳ございません。面接で、この様な事を話してしまい、すいませんでした。」
初めて真ん中の人以外の人から質問がくる。
「もし甲子園に行ける様なチームでないと判断したら、吹奏楽に入部しますか?」
私はまた我を忘れて、席を立ち、大きな声で
「そんな事は絶対に有りません。絶対に甲子園に行くし、絶対に優勝します。」
やってしまった!
すぐに席に座り謝罪する。
真ん中の人が
「じゃあ分かりました。これで面接を終わります。」
私は教科書通り、席を立ち
「ありがとうございました。」
と深々とお辞儀した。
ドアを開けて面接室を出た瞬間、涙が零れ落ちてくる。
涙を流しながら校舎を後にした。
やっちゃった、もうダメだ!
勝利・・・
筆箱から鉛筆を取り出す。
「頑張れ!」
と書かれた鉛筆を手にすると、勝利から「頑張れ!」
と言われている様な気分になり、涙の量が増していった。
勝利、ごめんね
次の日から1月22日の発表まで、生きた心地がしない。
都立の願書も何とか間に合うと言われたが、合否を見てから考える事になっていた。
そして発表の日がやって来た。
もし合格していたら、入学手続きの事もあるので、母も一緒に行くと言って、私と二人で電車に乗って心城学園に向かった。
駅を降りて、学校まで歩き校門に辿り着くと、校門から正面に大きな掲示板が見えた。
何とも言えない緊張感が襲ってくる。
一歩一歩掲示板に近づいていく。
1番から下を見ていくと一番下が25番で終わっている。
私はまた上を見て1番の横の横の行を見る。
51、54・・・55
あった〜
受かった〜
母と手を取って喜んでいると、後ろから何処かで聞いた声が聞こえた。
「飯島さん、おめでとう」
?
私は声がした方に振り向くと、そこには面接の時に真ん中にいた小太りの先生が立っていた。
「面接の時はすまなかったね。校長の有馬です。」
え〜校長先生!
私は慌てて挨拶をする。
「こちらこそすいませんでした。」
すると校長先生が
「僕も行けると思うよ、甲子園」
と笑顔で言った。
私も笑顔で
「はい。」
と答えたのであった。
母も校長先生に挨拶をする。
「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
と校長先生にお辞儀をした。
私は母に
「合格通知もらってくるね。」
と言って、母と校長先生をその場に残し校舎に走った。
私の高校生活を送る校舎に向かって
奈緒が合格通知を校舎に取りに言った後も、校長先生と奈緒の母は、その場で話し込んでいた。
「娘さんですが、吹奏楽の先生から聞いたのですが、かなりの素質を持っている様ですが、本当にいいんですか?」
「はい。
あの子が10年に及ぶ恋をしている子と同じ夢を歩みたいって聞かないものですから。相手の子は別に好きな子がいるみたいなんですけどね。困った子です。」
校長先生は驚いた様子で
「娘さんの事を本当に信用しているんですね」
「校長先生、親としてでは無くて、女として応援しているだけですよ。我が子ながら、生き方が切なくて」
「青春ですね」
「そうですね。青春ですね。でも、あの子にとっては一生忘れない高校生活を送ってくれれば、親としては満足です。ただ、あの子も私も、野球の事は全く分からないんですけどね」
そんな会話をしているとも知らず、笑顔で合格通知が入った袋を持って母の所に行く
「はい、合格通知よ」
と母に渡した。
あれ?
「ママ何で泣いてるの?」
1月22日(勝利)
今日は私立高校の結果発表という事もあって、午前授業で授業も自習となっていた。
午前11時、携帯に着信がある。
先生も居ないし、そーっと電話に出ると、奈緒の声が聞こえてきた。
「勝利!受かったよ。心城学園に受かったよ!」
心城学園?
「お前、心城学園の推薦は蹴っただろ?」
「うん。だから吹奏楽は、やらないよ」
?
クラスみんなの視線が痛い。
「後で掛ける。」
と言って電話を切った。
そして午前中の授業が終わり耕太と祐輔が僕の教室にやってきた。
そして二人に奈緒の事を伝える。
「奈緒から電話があって、心城学園に合格したって」
耕太がビックリして
「えっ!奈緒は心城学園の推薦を蹴ったんだろ?」
僕と同じ反応をした。
「俺もそう言ったんだよ。そうしたら、高校では吹奏楽をやらないんだって言ってた」
耕太「それで何やるんだよ?」
「さっきは、そこで電話切っちゃったから知らないよ」
耕太「何で聞かないんだよ!」
「そんな事言ったって授業中だったから、しょうがないだろ。耕太が電話しろよ」
すると耕太が、態度を一変して
「勝利、頼むよ」
「分かったよ。でも外に出てからな」
そして3人は、殆ど居なくなった教室を出た。階段を降りて下駄箱で靴に履き替えて外に出る。
今日は1、2年が午後も授業があるため、学校でキャッチボールも出来ないので、外に出た僕達は、校門を出てそのまま家に向かって歩きはじまた。
校門を出ると、携帯を取り出し奈緒に電話を掛けた。
着信音はなっているのだが、電話に出ない。
耕太も祐輔も僕の事を熱い眼差しで見つめてる。
電車かな?
「何?」
声が聞こえたのと同時に耕太と祐輔が驚きの声を上げる。
「わあ!」
声の先に奈緒と彩香の姿があった。
耕太「何だよ。いるなら電話しろよ。」
奈緒「だって、勝利が後で電話するって言ってたんだもん」
何か嫌な予感がした。
耕太「やっぱり勝利が犯人かあ!」
何が犯人?
まあいいか
「はいはい、僕が犯人ですよ」
耕太が僕を見つめ、奈緒に聞けと言わんばかりに目で合図を送る。
「奈緒、お前高校でやりたい事って何だよ?」
「知りたい?」
鉛筆を購入した時も同じやり取りをしたが、今回は耕太をダシにして答える。
「耕太が教えて欲しいんだって」
してやったり、と思っていたが、耕太が物凄い形相で僕を見ている。
やばい!
「嘘だよ。俺が知りたいんだよ」
奈緒は勝ち誇った顔をして、
「じゃあ教えてあげよう。私は野球部のマネージャーになる事にしたんだ。」
「えっ!だってお前、野球知らないだろ?」
「うん。これから覚える」
奈緒が野球部のマネージャーになるのなら、耕太も喜んでいるのだろうと、耕太を見た。
?
耕太は、喜んでいる雰囲気ではなく、逆に落ち込んでいるように見えた。
すると祐輔が話を変えた。
「彩香は、大丈夫だった?」
彩香は事前に内申で合格を先生から伝えられていたので、今日は取り敢えず合格の確認をしに学校へ行っていた。
「うん。合格してたよ」
これで5人の高校が決まり、
後2ヶ月の中学校生活を送るだけとなった。
(耕太)
結局5人で家に帰った。
奈緒・・・
そこまで勝利の事が好きなんだ。
はあ〜
溜息が止まらない。
家について、自分の部屋に入る。
あ〜あ!
とベッドに飛び込んだ。
すると祐輔から着信が入った。
電話に出る。
「どうした祐輔。お前から電話なんて珍しいな」
「大丈夫か?」
「何が?」
「とぼけるなよ」
いつもの吐き捨てるような言い方では無く、やけに優しい言い方だった。
その言い方は、かえって心に突き刺さった。
「まさか祐輔に、恋愛の事で心配される日がくるとは思わなかったよ。
だけど、あんまり大丈夫では無いかな」
「そうか」
「えっそれだけ?何かいい事を言って、慰めるとか無いの?」
「それは無い。何となく気持ちは分かるけど、気持ちの深さまでは分からないから、慰める事なんて出来ない。
ただ、耕太は馬鹿だから」
?
何故そこで止める?
「馬鹿だからの先は?」
「男なんて、ちょっとでも気になる子は、みんな好きなんだよ。ただ、どのタイミングで1番好きになり、どのタイミングでその想いが無限に積もっていくのか分からない。困った事に、積もり始めた想いは止まらない。
その想いをリセット出来るのは、諦める事しか出来ない。想いを積もらせる事は簡単だけど、その積もった想いが強ければ強いほど諦める時の苦しみが強くなる。耕太は、その苦しみに耐えれるのか?」
祐輔は、たまに鋭い事を言ってくる。
「俺は前から奈緒の事が好きだったけど、勝利の事が好きだと分かっていたから、何とか想いを積もらない様にセーブ出来ていたが、夏休みに勝利が恋をしてから、俺は欲が出てしまい、心のセーブ出来なくなった。それからは今までの想いが次から次へと溢れ出して止まらない。
奈緒の勝利への想いは1mmも変わらないのに、奈緒がとった行動に憤りを感じてしまう。自分勝手で最低だよ俺は」
「元々耕太は、最低なんだから、しょうがないだろ。でも、そんな耕太も俺は好きだ。
カッコいい恋愛では無いが、耕太も奈緒を好きになった時に覚悟していたんじゃあ無いのか?」
確かに祐輔が言う通り、実らない恋だと覚悟をしていた。
でも、好きを止めれなかった。どうしても奈緒が好きだったんだ。
「うん、そうだな。覚悟はしてた。ただ、俺バカだから、どうしても諦められないんだ。
最低と言われても、俺は奈緒が俺の事を見てくれる日が来るまで、この想いを積もらせて行くよ。」
「本当に馬鹿だな。」
奈緒の勝利への想いは、測りきれないほど強い、もし勝利への想いを諦めなくてはならない時が来た時は、想像もつかない苦しみが襲うだろう。
その時は俺が奈緒を全力で支えよう。
いつか前を向く時がくる日まで、俺が奈緒を支えてみせる。
それでも他に想いが行くのなら、全力で応援しよう。
今の俺は、奈緒への想いは止められない。でもいつか、この想いが満たされる事を信じて、俺は頑張ろう。
「祐輔ありがとうな。少しスッキリしたよ」
「卒業式、告るのか?」
「まだ分からない。」
「そうか、ゆっくり考えるんだな」
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