第一話 「掛け軸」

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 ちなみに祖母は一人娘でして、おじいちゃんは親戚筋からの婿養子です。問題の絵をきちんとまつり直したせいか、父は何代目かぶりに生まれたこの家の直系の男子です。  でもおばあちゃんは「念のために」と、父に女性の名をつけました。男の子に女の子の名前をつけるのは、丈夫に育つようにと願いを込めたおまじないですね。ハローページに載っている父の名前が女名なので、小さい頃は家の電話に変な電話がしょっちゅう来ました。 「もうおばあちゃんも危ないし、このまままつり続けてもまた忘れちゃうかもしれないでしょ。きっとあんたや○○(弟)も任せられるのは嫌だろうし。だからお返しして来たの」  あっけらかんと母親に告げられ、言葉が出なくなりました。  たしかに掛け軸を見たことはあります。幼い頃、白装束の拝み屋さんが家に来て、床の間で何かを拝んでました。かすかに記憶はありますが、こんな話につながるとは。  そんなことならあの絵をしっかり眺めておけばよかったよ。どんな絵だかも覚えてない……一番事情を知っていそうな祖母はすでに寝たきりでして、意思の疎通はできませんでした。  メモ帳のような文で恐縮ですが、お付き合いいただければ幸いです。  またホラー書きのくせに怖がりでして、今もお守りを前に置いてます。自身が怖くならないように語り口は大変軽薄です。  どうぞよろしくお願いします。
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