第二話 「連れて来る」

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第二話 「連れて来る」

 友人との世間話の際、語られた話です。 「お姉ちゃんの旦那さん、出張から帰って来るたびに何か連れて来るんだよねー」  彼女の義兄は出張が多く、あまり家にいないのですが、義兄が帰って来るたびに水道の調子が悪くなる。何度業者に来てもらってもまったく原因がわからない。  また、姉には幼稚園に通う二人の子供がいるのですが、義兄が帰って来る日に限って「今、玄関に誰か来たよ」と姉に報告するらしい。  言われた姉が玄関を見ても、誰かが訪れた気配はない。でも何となく玄関がいつもより暗いような気がする。そんなことが幾度かあって、気味が悪いと思っていたそうです。 「だけどこの前、お姉ちゃんが夕飯の買い物から帰ったら、玄関のくもりガラスの向こうに人がいるのを見ちゃったんだって。びっくりしてドアを開けたんだけど、もう誰もいなかったって」  それは腰の曲がったおばあさんらしい人影で、まったく心当たりがない。姉はあわててあら塩で玄関に盛り塩をしましたが、どんなに湿った塩を使ってもすぐに崩れてしまうとのことでした。 「でもおかしいんだよねー。旦那さんが出張に出ると水漏れが直っちゃうんだって。それに、なんでか盛り塩が崩れることもなくなって、玄関が明るくなるんだって」  そんな事態が何度か続き、ついに姉は旦那さんにお祓いを勧めたそうですが、取り合ってもらえなかったとのことです。 「どっかで『犬を飼うといい』って聞いたことがあって、お姉ちゃんに言ってみたんだけど、『あの人、犬嫌いなんだよね』ってあっさり断られちゃった。多分そういう旦那さんだからお化けを連れて来ちゃうんだろうね」  笑い話のような口調で友人は締めくくってました。
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