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第三話 「キャンプ場」
子供の頃の話です。
夏休み、子供会の旅行で子供だけのキャンプに参加しました。もちろん引率の大人はいますが、テント張りやら食事作りは基本子供のみで行います。
各テントには四、五人の子供が寝袋で横になりました。朝、食事の支度をしていると、男子が一人参加していない。よく見ると引率の大人に囲まれ、泣きじゃくりながら訴えています。
「お化けを見た。うちに帰りたい。早くこの場所から出たい」
話を聞くと、彼は「女の幽霊が出た」といいます。情緒不安定な彼の様子は演技とは思えませんでした。
深夜、彼が目を覚ますと、寝ていたテントの周りをぐるぐる懐中電灯の光が回っている。はじめは見回りの大人が持った明かりだと思ったそうですが、それにしてはいつまでたってもテントのそばから離れない。
おかしいな、と思ったとたんにすっとテントの入り口が開き、誰かが入って来たそうです。
それは白い服を着た女の人で、どう見ても引率の大人ではない。一番奥に寝ていた彼がびっくりして見ていると、入り口近くで横になっている友達の上にふわっと正座したそうです。その状態で自分に気づいた彼のようすをじっと見ている。
彼が硬直していると、次に寝ている友達の上にふわっと移動してこっちを見る。何度かそれをくり返しながらどんどん彼に近づいて、ついには彼の真横で寝ている友達の上に乗りました。
首をのばした女の顔がだんだん彼のそばに寄り、ついには目の前に迫られて、「もうだめだ」と思った彼はそのまま気絶したとのことでした。
どうも「出る」と有名なキャンプ場だったらしく、今考えても何となくうす暗いような雰囲気でした。
次の年はまた違う場所で、同じようにキャンプを行いましたが、彼は二度とキャンプには参加をしませんでした。
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