77人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
「あのー、お客様?」
「利江ー」
「え!?」
店員と孝弘に声をかけられて、ふと我に返る。気が付いたら私は行列の一番前にいた。
「何になさいますか?」
「え、えっとー……」
あれ? スタバの新作って、なんだったっけ? パッと名前が出てこない。
「えっと……キャラメルフラペチーノで」
仕方なく、私はいつも頼んでいるものを注文した。そして、もう一つ重大な問題に気付く。
「あ、孝弘……」
「どうした?」
「……財布忘れた」
「……わかった。俺が払うよ」
孝弘はため息を吐きながらも全額奢ってくれた。申し訳ないと思いながら、美味しくいただく。
私は、今日みたいに、ミスも多いし周りにも迷惑をよくかけるが、孝弘は、そんな私と長く付き合ってくれるだろうか。
少し心配ではあるが、これまで私がやってきたことを考えると、孝弘にフラれても文句は言えないし、私は孝弘に一途でいなければならない、というか一途でいたい。
私は沢山の人と関わっていく中で、様々なことを学び、自分が間違っていることに気付き、変わることができた。そしてもっと変わることができるだろう。きっと、その先には結婚が待っていて、幸せな生活が待っているのだ。
その期待と希望を胸に、私は孝弘と肩を並べて前に歩き出した。
ピロン、とスマホが鳴った。ポケットからスマートフォンを取り出し、届いたメッセージを見る。
『久しぶり、大海だけど、海外生活に疲れたから日本に帰ることになった。一週間後くらいにはあの場所に戻ってくるから、そしたらまた一緒に遊ぼう。うちの高級なご飯も食べさせてあげるよ。待っててね、愛しのリエーン』
最初のコメントを投稿しよう!